内容説明
この社会はどのようにして、現在のようなかたちになったのか?
敗戦、ヤミ市、復興、高度成長、「一億総中流」、
バブル景気、日本経済の再編成、アンダークラスの出現……
「格差」から見えてくる戦後日本のすがたとは――
根拠なき格差論議に終止符を打った名著『「格差」の戦後史』を、
10年の時を経て、新データも加えながら大幅に増補改訂。
日本社会を論じるならこの一冊から。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゆう。
25
とてもしっかりとした研究だ。しかも読みやすい。一口に格差といっても、それがどのように変化してきたのか、また階級というものの変遷とからめて考えることができた。僕はマルクス主義の階級論は、今日の日本社会の格差や階級、貧困を捉えるうえでベースになると思っているが、著者はマルクスに対する評価は違えど、実証的に明らかにしていく方法論には、とても共感でした。多くの人に読んでほしい一冊。2020/04/25
おおた
19
日本の階級社会は80年代から加速していき、90年代に日経連(現経団連)が終身雇用を見直し、小渕首相の下で成果主義を求める方針が決まる。2000年代に入って男性の非正規労働者が増えると共に貧困率も上昇、技術と能力がない人々はアンダークラスに追いやられて階級社会がますます進行しているのが現在。社会人になって非正規労働者と正社員をいったりきたりの自分にとっては、肌感通り。社会全体では少子化による若年層の負担が語られてきたけれども、そこに階級社会がのしかかると一層生きていくのが困難な国になっていくのだろう。2022/08/11
かんがく
9
とにかくデータが豊富かつ緻密で、グラフもみやすいので格差と階級の実像がよくわかる。一方で、単なる数値の羅列にはならず、サザエさんやあしたのジョーなどのサブカルチャーや社会史の記述も多く、バランスの取れた構成になっている。東日本大震災についての分析はなるほどといった感じ。2020/11/19
Masatoshi Oyu
7
戦後日本の階級の分析から、格差や貧困の問題を論じる。 昨今格差問題に焦点があてられ、よく小泉改革が主因とされる。しかし本書によれば、日本での格差縮小は敗戦直後の混乱期と高度成長期のみである。そして問題なのは、日本は格差そのものをあまり問題とはとらえず、寧ろ格差を拡大させる政策をとり続けてしまったということで、その結果、若年非正規労働者が「階級より下の階級」として厚い貧困層を形成してしまっていること。格差・貧困問題の解決は急を要する課題であると分かる。作者によれば、機会の平等は論理的にあり得ない。2021/12/25
元気伊勢子
5
格差社会と言われるようになってからかなり経つ。今の自分は、何とか暮らせているけれどいつどうなるかなんて分からない。読んで前向きな気持ちにはならなかったが、どう生きていくか考えていけたらとは思う。2024/10/30