内容説明
堅実な生活設計を立て、誘惑に負けない決意を固めて、女ひとり、大都会での生活を始めたが……。という、聡明な娘の転落を、都会の非情さにからめて描いた、表題作。華やかなネオンの海で送る男と酒を相手の虚飾の日々。したたかに泳ぐ女、辛酸をなめる女、傷つく……。運命に翻弄される薄倖の女たちの哀歌をうたった8短編。
感想・レビュー
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ぼっせぃー
2
「心斎橋幻想」「南国の足跡」「深夜劇場」「氷河の瀑布」「茜ホテル」「湿った砂漠」「ガラスの橋」。裏切り、裏切られる男女をウェットに描いたシリーズだが、飛田を舞台にしたものより時代の脂というべき泥臭さがある。「南国の足跡」「氷河の瀑布」のような人間性のギリギリを突いた作品もあれば、「湿った砂漠」「ガラスの橋」のような、スレていきながらも人が人を求める必然性を優しく描く作品もあり、昨今のタワマン文学と見比べて、人間の持つ感情の種類は変わらないものの、その表現と眼差しの豊かさでこちらがホンモノと思わせてくれる。2022/10/07