内容説明
プラトンによれば、ソクラテスは、「……とは何か」と問うた。「正義とは何か」「美とはなにか」。真理を捉えるための「知性」や「理性」を最も重要な心の働きとする西洋哲学の伝統が、ここから生まれた。
これに対して、本書は、「想像力」を優位におく思想に着目する。イギリスのロマン主義者からはじまって、アメリカのエマーソンに継承され、ニーチェ、ハイデッガー、ローティにつながる系譜である。
真理は定まっていて、「理性」や「知性」は、それをあるがままに捉える能力だとするのが、プラトン的「理性主義」だとすれば、「想像力」とは、新たな見方、捉え方を創造する力である。これをローティは、「詩としての哲学」と呼んだ。
デカルト、カントなど、理性主義の変遷をも検証しつつ、「詩としての哲学」の可能性を問う力作。
目次
第1章 プラトンとの決別
第2章 エマソンとニーチェ
第3章 ハイデッガー の二面性
第4章 プラトン的真理観は、どうして機能しないのか
第5章 原型的経験論の対する二つの誤解
第6章 デカルト
第7章 カント
第8章 詩としての哲学
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ころこ
33
ここでいう「詩」とは、ローティ『偶然性・アイロニー・連帯』でいう文学と同義です。第2章で紹介されているように、13歳の時に哲学にはまったローティが読んだのがプラトンであり、著者の軌跡と一致している一種の信仰告白になっているのが興味深く読めます。ローティは同時にニーチェも読んでいた。これらを単なる趣味や読書の傾向だととらえてしまうと、本書が何をいっているのか全く理解できないでしょう。(そのアメリカで理性主義的なイデオロギーが台頭してきているというのは更に興味深いですが)そして、ニーチェとエマソンに共通してい2021/03/03
シッダ@涅槃
27
気の抜けた炭酸水のような読後感。大きなテーマの設定はよかったのだが。紙幅の割に小テーマが多岐に渡り、それぞれに軽くかすっただけで、結局像が結ばなかった。なにより、「ニーチェ、ハイデッガー、ローティ」とあるが、彼らについても同じようなもので、特にローティはどんなひとかまるでわからない。もちろんこちらはのリテラシーのなさがこんな感想を生んでいるのだが、ひとつ言えるのは入門の書ではないということである◆アメリカ現代言語哲学の「暗喩」に言語の新たな可能性を観るという部分だけ大変面白く感じられた。2021/03/27
呼戯人
19
私達は象徴としての文化を持ち、その象徴の世界で意味を作り出す。哲学も真理を求め続ける、真理とは何かと問い続けつつ、その活動の中で芸術を作るように哲学を作り出す。そのような人間の活動は、いわゆる客観的実在とはなんの関係もない。詩的想像力こそが私達の文化の根底にあり、それこそが美的現象として実現する哲学の本当の姿だとニーチェは言う。それは、ハイデッガーやローティにも引き継がれ、ニーチェはその考え方をエマソンから受け継いだ。そういう詩としての哲学の系譜を描く好エッセイ。2020/03/15
フリウリ
7
知性・理性重視の西洋哲学本流vs.想像力重視のロマン主義の系譜、真理の対応説vs.真理の整合説などなど、きわめて見通し良好な議論が続き、わかりやすいです。一方で、表題である「詩としての哲学」(ローティ)については、概念(外枠)だけが示されるだけで、内容がよくわかりません。概念の妥当性を主張するためだけに哲学史を講義しなければならないのは、哲学者の宿命かもしれませんが。「詩としての哲学」が示しうるものが何かを知りたいですが、それは詩を読めばわかることなので詩を読みなさい、ということかもしれません。62023/06/10
袖崎いたる
5
再読。デカルトとカントがフルぼっこ。おもにエマソンとニーチェの澪を引いたローティの視点から批判している。再読してみて、ローティが『哲学の脱構築』(だったかな?)のあとがきで哲学者を弁護士に喩えていた理由がニーチェに由来していることを知る。ニーチェさん、哲学史上のお歴々を願望ベースドな意見をこじつけるために理論構築をしてきた〜なんて言っててさ、それで自説を弁護する哲学者たちはみ〜んな弁護士やんけ!って想像したのが、たぶんローティ。デカルトとカントに距離をとりたい人は読んでみるといいかもしんない。2021/01/11
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