内容説明
華やかな舞台での熱演、鳴り止まぬ大歓声……しかしその裏では、血と汗と金にまみれた争いがあった――。情熱と野望で大衆芸能の発展に貢献した、松竹・吉本・大映・東宝の創業者たち。その波瀾万丈の人生やライバルとの仁義なき戦いを、膨大な資料からドラマチックに描く。ヤクザや官との癒着、札束攻撃、二枚舌……昔も今も、芸能界はグレーゾーンだらけの弱肉強食の世界。注目の演劇研究者による、興行師たちの物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
gtn
26
興行とは、労多く益少なしものと分かる。松竹を創った大谷竹次郎も「道楽」が事業の邪魔をしていると心情を吐露する。道楽で生きられるならまだいい。道楽が高じた十二代目守田勘弥は死して多額の負債を残し、竹次郎の次男隆三は、道楽に徹することができず、アルコール依存症となり、自宅に火を点けてしまった。昨年の吉本騒動で、専属エージェント契約という名の興行に足を踏み入れてしまったタレント。今までの芸能活動に加え、自らのマネジメントを絶え間なく行うこととなったが、彼の健康を願うのみ。2020/03/07
kawa
24
守田座の守田勘弥、松竹の大谷竹次郎、吉本の吉本せい、大映の永田雅一、東宝の小林一三、明治以降の興業界の立志伝中の人々の評伝。業界が業界だけに、血と汗と金にまみれた仁義なき戦いがドラマ的で面白い。皆さん、功なり遂げた後の脛の傷を隠匿しようとするところが、ちょっと厭らしく不満。功なり遂げていない私にもそういうところがあるから仕方ないか…、感想になっていないですね。2020/04/12
CTC
10
1月の新潮新書新刊。著者は筑波大院で文芸・言語専攻の文学博士だが…ウィキペディアを見て、仰天。銭湯手桶のケロリンでお馴染みの製薬会社現社長さまである(79年生まれ)。私は朝堂院大覚的な興行をイメージして購入したのだが、松竹やら宝塚、或いは歌舞伎の現在の地位確立に至る経緯が知られて大変面白かった。特に著者は自伝や過去研究を引く際に、本人による脚色や周囲の忖度を排すべく努めている。例えば『小林一三全集』など、「編集委員は親族や友人が務めており」と全く歯牙にも掛けていない(小林は第二次近衛内閣の商工相)。2020/04/08
100名山
10
芸能界とやくざの関係を知りたくて本書を取りました。笹山敬輔という研究者が文献を拠所に纏めたテレビ全盛以前の興行主から見た大衆芸能史でしょうか。国が大衆芸能もしっかり管理していることを認識しました。また著者の立ち位置も悪くないです。普段役者や監督しか見ていないですが、興行主、プロデューサーというものが蠢く世界を垣間見ることができました。ま、讀まなくてもよかったかな。(笑)文章は読み易いです。著者は温泉宿においてあるあの黄色いプラスティックの桶に緑の文字のケロリン桶を考案した人の孫でした。現内外薬品社長(笑)2020/03/17
Masakazu Fujino
10
ほとんど、知らなかった話ばかりで大いに興味を惹かれた。特に永田雅一と長谷川一夫の関係は、とても興味深かった。2020/02/08