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内容説明
先進国に同時多発的に起こった多様な社会運動は、日本社会を混乱の渦に巻き込んだ。その結果生まれたウーマン・リブ(→フェミニズム→男女共同参画)、核家族化(=儒教道徳の残滓の一掃)、若者のモラトリアム化(→「自分さがし」という迷路)、地方の喪失(=郊外の出現)、市民の誕生と崩壊、「在日」との遭遇などの現象は相互に関連しながら、現代社会の大きな流れを形作っている。前史としての“60年安保”から、ベ平連や全共闘運動を経て三島事件と連合赤軍事件に終わるまでの“激しい時代”を、新たに発掘した事実を交えて描く現代史の試み。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
耳クソ
18
ところどころ面白い部分もあるのですが、『革あ革』と比べてずいぶん希望も混沌も減らされてしまっているので「リーダブル」なのに読みにくく、読みながら何度か寝ました。精神的に辛いときはこっちじゃなくて『革あ革』を読むといいです。たとえば日曜の夜とかね。2023/08/20
またの名
12
かつて抵抗と闘争の実践の中で語られた公害やフェミニズムやポストコロニアルな問題にアングラ文化までが今や大学の制度に組み込まれアカデミズム内の業績作りのためのツールになった転換の年を起点に、国内の文芸史と思想史を概観。学生運動の隆盛とそれが体制に回収されて正史とは違う周縁的な偽史の想像力に訴えるサブカルへ変わっていく推移において、左派からも右派からも直線的には語れない様々な主張や異論や運動が飛び交った状況を理想化せずに描く。『共同幻想論』にオカルト的な側面があったとの指摘は激しく同意(そこが良さでもある)。2017/02/17
白義
12
1968の思想にこだわり続けるすが(なぜか変換できない)秀実が送る気合いの入った論考。全共闘前後の社会運動史や思想風土を剛胆に描写している。微温的左派への嫌悪、マイノリティ運動の勃興にサブカル、オカルト的な想像力の共同体と、予想以上に現代で再演されたり、日常として浸透しているものが多いのに驚く。吉本隆明の読みに抗い、中野重治の「村の家」を本質的に非転向者の正史に従属したロマン的な小説として読むところは圧巻。ただし、初心者が入門書として読む本ではない。前提知識を必要とするがスリリングな熱気漂う良作2012/05/06
無重力蜜柑
11
意味不明。文芸評論家の悪いところが全部出ている。メタファーとアイロニーによる雑な論理の飛躍が多すぎてまともに追いかけられなかった。「〜的な」という表現が頻出するが、著者はこういう言葉の意味をしっかり考えて使っているのだろうか。自分は左翼思想に興味はあるが、こういうジャーゴンまみれの「思想」を内在的に捉えたい気持ちは全くないのだなとわかった。1968年前後の論壇や学生運動の雰囲気は伝わった。立花隆でも読むか。2022/08/24
モリータ
11
新書としてのリーダビリティへの配慮がそこここに感じられるにも関わらず、厳しかった(特に偽史的想像力と吉本隆明、中野重治を論じた四章はチンプンカンプンに近い)。ターニングポイントとなる「華青闘告発」が新左翼運動に与えた影響の性質は理解できた。補助線となる歴史的基礎知識なり筆者の文体への慣れなり問題意識なりを得てから再度挑戦したい。2019/08/16