内容説明
就職活動はうまくいかなくて、そもそも特にやりたい仕事もなくて、彼女とは喧嘩になり、未来が全然見えない。実家の母親はすでに亡く、父親はアイドルグループにはまっていた。笑うチャンスはたくさんあったけど、素直に笑える気はしなかった――。誰かが君を見ていてくれる。たとえば、「家族」とか。第11回小説宝石新人賞受賞作の表題作をはじめ、モラトリアムを生きる若者たちと家族の交流を瑞々しく描いたデビュー作品集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
昼寝ねこ
103
家族の絆をテーマにした短編集。舞台は札幌市近郊の深樽別市(架空の街)。全編同じ街の出来事なので連作形式にして最終話に伏線回収するスタイルにすれば良かったのにと思った。表題作の『ウミガメみたいに飛んでみな』はカッ飛んだ内容で面白いが、他の作品はまとまりが良くイイ話に着地してはいてもカッ飛び感があまりなかったのが残念。できたら突き抜けた内容で攻めて欲しかった。しかし家族愛を様々なアプローチで描いているのは好印象で随所に出てくる北海道弁もホッコリする。まだ作品数が少ない作家さんだが今後にかなり期待できそうだ。2024/12/07
やも
85
夢を追いきれなかったり、引きこもりの息子がいたり、お母さんがいなくなったり、お祖母ちゃんが亡くなったり。割り切るにはまだハートが追いついてない人たちの7話の短編集。全話が想像以上に良くて、どこかしらでしんみりほろり。最近流行りのヘビーすぎる境遇の人たちが藻掻くとか、そういうんじゃないのが良い。ヘビーはヘビーだけどちょうどいい塩梅。若い父親、そこそこの年齢の父親、小学生女子、中学生男子、大学生女子、青年…と、色んな立場の人が出てくるから飽きないし。ラストの場面の終わらせ方が秀逸。この作者さん、これから注目!2024/06/30
Ikutan
64
第11回小説宝石新人賞受賞作品である表題作を含む七つの短編小説。別居している娘と元バンドマンの父親。息子の勉強机の抽斗にナイフを見つけた父親。家を出た母親の代わりにやって来た祖母に反感を抱く少女。亡くなった兄の幽霊に会いたい少年。など様々な立場から描かれた家族の物語。共感したり、ホロリとしたりと温かな読後感。作者の出身地である北海道弁も良き。表題作は母親の死後、アイドルに夢中になることで元気を取り戻した父親と、そんな父親に反感を抱く就活中の大学生の心情が丁寧に描かれ、とても良かった。タイトルと装丁も好み。2024/07/05
もぐたん
63
小さな娘と不甲斐ない父親、息子の抽斗にナイフを見つけた父親、家族の幽霊に会いたい少年と気弱なぼくとの交流など。心にスッと刺さった鋭い痛みが消えぬ間に、ゆっくりと、しかし必ずほかほかと温まること間違いなしの家族の物語。いろんな形の家族があり、大事件もありながら、それぞれの幸せに向かって歩き出す様が清々しい。状況が違っても絆がある。赦し、希望、再生が盛り込まれた本作は、いろんな年代、いろんな立場の人に読んでもらいたい。疲れた心に、特効薬ではない、漢方薬のようにジワジワと効いてくるような良書。★★★★★2024/06/07
papapapapal
45
小説宝石新人賞受賞の表題作を含む7つの短篇。かなり良い! 就活と実家と彼女との関係を描いた表題作、小4女子と最強魔女、兄弟を亡くした中学生、脱退したバンドと元妻への未練、思春期の息子の取り扱いに躊躇する中年男性など、目線それぞれ。ままならなくてイライラする日々に、ふと気付く家族や友人の温かさと可愛らしい人間味がじんわり沁みる。 本山聖子さんの『おっぱいエール』と同時受賞とのこと。作品はまだ少ないようだけど、是非これからも追いかけたい作家さん。何度も言います、これ、かなり良い!2024/05/12




