内容説明
日本では男性に政治権力が集中している。何が女性を政治から締め出してきたのか。そもそも女性が極端に少ない日本の政治は、民主主義と呼べるのか。客観性や中立性をうたってきた政治学は、実は男性にとって重要な問題を扱う「男性の政治学」に過ぎなかったのではないか。気鋭の政治学者が、男性支配からの脱却を模索する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
rico
121
今のところ最も「ましな」政治体制と位置付けられている民主主義。その構成要素として、そもそも「女性」という存在は視野にすら入っていなかった(いない)という事実。政治やビジネスの組織で称揚される資質が、性別役割期待で求められる男性的なものと合致するという指摘自体は目新しいものではないが、「代表」という概念や様々な政治体制の比較、女性と政治の関係や苦闘の歴史等、コンパクトにまとまって、政治学入門書としても読めそう。それにしても日本の変化の遅さ。既得権打破を言うなら、こここそ最大のターゲットだと思うのだけど。2021/01/17
佐島楓
77
第4章の有権者がなぜ女性議員を選出しないのかというあたりを読めばこの国の病理がわかると思う(そもそも論になってしまうのも仕方ない)。私としては女性がジェンダーバイアスを自分自身に適応させてしまうというより、男性からの圧力に屈してしまう(もしくは、そうせざるを得ない)構造に元凶があると感じるため、大枠では著者の論調に同意できた。2019/10/08
naginoha
51
専門書のようで読むのに時間がかかったが、興味深い内容だった。 女性が政治の世界に参加できるようになったのは日本では戦後の話。それから年月が経つが女性議員が中々増えない。議員に求められる資質が男らしさと呼ばれるものと共通していることが多く、議員に向いている資質の女性は「男勝り」と揶揄され、「女性らしさ」をもつ女性は「議員に向いていない」と、どちらに向いても批判されるジレンマに陥っていると指摘する。確かにそうだ。女性のいない政治では女性の願う政策がなかなか通らない。問題深し。他にも様々な的を射た指摘有。4/52021/01/20
樋口佳之
41
女性のいない民主主義を男性が論じた教科書だなあって感想。だけど、この本をシラバスに落として現職の大学で講義した欲しいなあと思いました。2020/02/17
フム
35
タイトルを読んで、政治に女性がいないなんて、そんなわかりきったことを、と思いながら手にとった。読んでみたら、思いの外勉強になった。本書の構成が政治学の教科書に取り上げられるような「政治とは」「民主主義とは」「政策」「政治家」というテーマを広く見渡しつつ、そこにジェンダーの視点があるかと問いかけているのだ。確かに、日本をはじめ、民主主義国家と言われるような国もそこに女性の意見は反映されていたか、という目でみると、それが本当に民主主義と言えたのかと思えてくる。それこそ「民主主義」の定義を考え直す必要がある。2020/01/10
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