講談社選書メチエ<br> 発達障害の内側から見た世界 名指すことと分かること

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講談社選書メチエ
発達障害の内側から見た世界 名指すことと分かること

  • 著者名:兼本浩祐【著】
  • 価格 ¥1,815(本体¥1,650)
  • 講談社(2020/01発売)
  • ポイント 16pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784065185285

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内容説明

精神科医が自分を振り返り自らに「発達障害」という診断を下したとき、自分というもののあり方、他者との関係や理解はどのように見えてくるのか。
ASD(自閉症スペクトラム)、ADHD(注意欠陥多動障害)、DCD(発達性協調運動障害)などの診断名で呼ばれる「発達障害」は病気ではないし、必ずしも「障害」ではない。脳のスペックの傾向であり、そのスペックに適した環境に置かれていないがゆえの不適応と考えるほうがはるかに実態に近い。
私のスペックは、たとえば精神科医、牡羊座、A型、DCD、右利き、日本人、大学教授などさまざまに表される。しかし、その中の一つに焦点をあて人としての本質として前景化した形で周りから名指されてしまうと、その「分かられ方」は自分からは切り離され、独自の存在として扱われることになる。
物事を認識すること、人を理解することにおいて、人間の思考の営みは常になにかを捨て去り、排他的に対象を輪郭づけようとするのではないか。ゆで卵が生卵からゆで卵に変貌する臨界点はどこにあるのか。
人工的に作られた名前が必ずしも「定義」から出発しているとはかぎらず、定義もまた定義づけられた瞬間からその「過不足のなさ」は揺らぐことになる。
人を了解すること、人を説明すること、それらの間にはなにか質的な違いがあるのではないか。また自分が自分を分かるということはじつは大きな謎であり、他人のことが分かることの謎へと連続的に連なっている。
本書は、著者による発達障害の自分史を事例としてつつ、「私」あるいは「私」と他者との関係の「分かり方」を考察する。名指すことによって分かるのでなく、繰り返し語らい合い、ともに眼差すことによって「分かる」ことへと接近するだろう道筋を探って。

目次

第一章 発達性協調運動障害としての「私」史
第二章 診断されるということはどういうことか
第三章 了解するとはどういうことか
第四章 了解を断念しなければならないとき
第五章 事例「私」の正しい取り扱い方

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

藤月はな(灯れ松明の火)

74
直属の上司の指摘がきっかけとなり、自分が発達障害(ASD+ADHD)と判明しました。その後、その上司に医師からの診断書を渡すも対応が変わらない事のストレスで悩んでいる時に目に入った本がこれでした。この本は発達障害と診断された後に「あの子は発達障害だから」というボックスに入れて切り離すのではなく、その後も理解していく事、理解できない状況を説いています。口だけで「分かる」という事と本当に理解する事には大きな隔たりがある。だからこそ、この本と読んで、私が上司に感じていた違和感はこれだと目から鱗が落ちた。2020/06/25

tamami

35
著者はDCD(発達性協調運動障害)とADHD(注意欠陥多動性障害)の二つの特性を持つ精神科医。この二つの特性に関わる幼少期からのエピソードを中心に、著者の自分史が語られると共に、現在の仕事の対象である様々な精神疾患の症状や対処法について、実際の症例を挙げながら解説している。症例についての学会での見方や解釈など、少し難しいところもあるけれども、著者の実人生を多々織り込んだエピソードは、大変に身につまされ、大いに納得するところとなった。 というのは、著者が持つ発達特性の一つADHDについては、筆者自身がそれ→2021/01/30

かおりん

31
著者は発達性協調運動障害をもつ精神科医。逆上がりが出来なかった記憶が鮮やかで考察がすごい。全編とおして哲学的、講義内容を文字に起こしたかのような文章。堅苦しくもあり、複雑な思考を垣間見て、とにかく圧倒された。2020/09/20

小鈴

17
『普通という異常』を読んで気づいてはいたのですが、精神科医の著者は「発達障害」であることを明示しています。社会に適応しているので「障害」ではなく非定型発達といったほうがよいのかもしれませんが。この本では「逆上がりができなかった」ということから始まり、これが実は発達性強調運動障害者であることを精神科医のキャリアを積んだあとに知るわけだが、当時において発達障害の特徴と「診断」されても救われなかっただろう。診断とはなにか、了解とはなにかを自分の事例を通して考えていきます。 2024/07/20

春風

7
発達障害についての本というよりも、ヤスパースの「了解」概念を再考する正統的精神病理学の本。オープンダイアローグへの批判も含まれる。2021/09/12

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