内容説明
とてつもなく過激で痛快、そして悲惨――とにかく無類に面白い。
ページをめくる手が止まらない傑作長篇!
原子力発電所が爆発し、臨界事故が続発するようになった世界。そこでは、放射能汚染による精子の減少と劣悪化が深刻な問題となっていた。
優良精子保有者である「種馬」の精子は民間の精子バンクが高額で買い上げ、その一家には一生遊んで暮らせる大金が転がり込んでくる。
一方で、第二次性徴期を迎えても、生殖器が大きくならず、セックスのできない不幸な子どもたちは「小便小僧」と呼ばれていた。
「小便小僧」として生まれたウマソーは高校を卒業後、警備保障会社に就職をするが、
市長の娘に恋をした罰として、使用済みの核燃料や放射性廃棄物で溢れる、廃炉になった原発を警備することになる。
やがてウマソーの性器は徐々に失われ……。
超格差社会の最底辺を生きるウマソーは、次々と襲いかかる悪夢にどう立ち向かっていくのか。
岩井俊二が全身全霊を込めて書ききった、壮大で豊饒なエンタテインメント。
解説・金原瑞人
※この電子書籍は2012年1月に幻冬舎より刊行され、文藝春秋より2020年1月に刊行した文庫版を底本としています。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ざるこ
52
廃炉となった原発が60基ある国で生まれたウマソー。放射能汚染の影響で元気な精子を持たない男が増え続け貴重な精子は売買される世の中。生殖器が大きくならないウマソーは種馬成金を羨みながら守衛として働く。小便小僧と馬鹿にされ次々と災難に見舞われて、どんどん悲惨な目に合うウマソーと生殖器。笑えない背景なのに笑かす。笑っていいのか?狂った世界で少しずつ壊れていく。しょうがないよ、そうなるよきっと。欠陥だらけの者たちの小さな幸せも素直に喜べない哀しさ。日本の未来の姿かも。過激でシュール悲壮感に満ちながらもおもしろい。2020/01/07
まさ
31
かなりしんどい1冊になった。読み疲れたのは久しぶり。背けたくなるのだけど読み終えてしまいたくて一気に読了です。放射能に汚染された世界で代を継ぐにはどうすればよいのか。絶望ばかりだった。再読するともう少し見え方が変わるかな。2020/04/25
kei@名古屋
24
岩井俊二の悪いところ出てるわぁ。スワロウテイルのような退廃し貧富の差が激しいと思われる国での話。そしてこれはひょっとしたらこの世界での日常なのかもしれない。激しく運命に翻弄される主人公のようでいてラストシーンにはこういう命のつながり方があったのかと少しだけホッとする。どんな世界でも命は繋がっていく。物語は良かった。が、久々に岩井俊二のぶっ飛んだ感を堪能できた気もする。岩井俊二が異世界を書くとこうなるのかもしれないな。と夜中異世界アニメを目撃した時にふと思った2020/02/19
しい☆
8
これが20年も前に書かれたなんて驚きでしかない。いまの現実にリンクしていて、怖くて、でも目が離せなくて切なくて。 岩井監督の本の中で1番好きかも。アニメで映画化してくれたらうれしいなあ。2020/01/06
noW or Never
4
図書館の文庫本にて読了/凄い、凄まじいという感想しか出てこない。巻末で解説の金原端人氏が『何』を連発して言葉にしているが、ホント『何?』『何なんだ!』と発狂したくなる/「嫌われ松子の一生」を最初、頭に浮かべたが、それも違う/果たして主人公のウマソーは自身の人生を哀れんでいただけなのか。いや、違う/自分に置き換えたらと思うと…辛すぎる/人生に何度も打ちのめされ、凹み、凹み、時に面白、可笑しく、凹み、時に暴力的に、凹み、凹み、最後の最後で子供が凸(笑)/新しい希望の形を提示している刺激的な面白い本である!2020/11/25