内容説明
作家人生の礎(いしずえ)となった地を、随筆と絵で辿る。
『雁の寺』『五番町夕霧楼』『金閣炎上』他、京都を舞台にした水上作品はいかにして生まれたか――。
僅か九歳で京都の寺に預けられた著者が、精神形成期を過ごしたこの地を、《愛憎もつれあって、悲しみも喜びも、吸いこんでいるつめたい土壌の街だけれども、いつまでたっても、この古都は私から消えぬ。》と綴る。
往時を回想しながら六孫王神社、五番町遊廓、今宮神社、相国寺塔頭瑞春院、衣笠山等持院、東山二条産寧坂、千本丸太町、保津峡、嵯峨鳥居本、大原桂徳院と十の地を巡り、自ら絵筆を揮い、街々の景色を描いた挿絵も掲載。
感想・レビュー
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うぼん
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若狭の貧家に生まれた水上勉が口減らしのため戦前京都の寺に連れてこられ小僧になった、脱走もしたらしい、という話は、昔に母か祖母から聞いていたが、相当キツイ生活だったことを本書で詳しく知る。坊主の学校に通わされていたという僕の叔父が「京都の坊主だけは云々」とよく罵っていた理由がよくわかった(銀閣寺事件)。冒頭話は六孫王神社の南側から始まる。僕は東寺八条壬生辺りで生まれ六孫はよく遊んだ場所だったので驚く。ズバリ貧民窟と書かれてあって苦笑、確かに戦後20年経った頃もその暗さの名残りはあったね。現在その気配はない。2022/02/04