内容説明
昭和四十年のアムステルダム運河バラバラ殺人事件から二十年以上経過して、私はアムステルダムへ駐在することとなった。そこで知る松本清張氏が記した『アムステルダム運河殺人事件』の謎、先輩の「死」の真相とフェルメールの贋作、そしてM子。歳月を経てすべてが繋がった。それはまさに「詭計」と呼ぶべきものだった―。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
きさらぎ
42
ばらのまち福山文学新人賞受賞作ということで手に取った作品。失礼ながら、古臭い文章で昭和の香りがプンプン…と思っていたら、やはり著者は年配の方でした。そういう時代を描いたものが好きな人・美術品の知識がある人には魅力的な作品だと思う。ぶつ切り&説明型文章が並び、私にとっては読みづらかった。ラストの一文がいい。著者もこれがやりたかったんだろうな~2017/04/08
むつぞー
37
先輩とその恋人であったM子、先輩が描いた絵…時代と思い出を辿りつつ、清張とフェルメールを重ねて描かれていきます。 作中に清張が扱われる事もあるからか、どことなく清張の作品を思わせます。 派手に盛り上げるのではなく、静かに丹念に事件を描き出し、淡々としてはいますが、読みやすく一気に読ませてくれました。 個人的にはフェルメール関係の美術ミステリかと思ってたので、ちょっと期待していたのとは違う方向性ではありましたが、出されたフェルメールについての考察は面白いと思いました。2016/06/02
ハンナ
29
進呈もの。これ、自分だったら見つけ出すことができたかなー。確かに、神が仰るとおり読んでる途中でも早く物語の中に戻りたいと思うほどに読ませてくれた本。ところどころ気になる言い回しや漢字の使用があるけど、これがデビュー作だと知ったら驚くかも。創作と現実と虚像が入り混じって、読み物として面白くしてくれてるかなー。ただ、最初は史実とか説明が多くてつらかった。これを乗り切ると一気読みで、エピローグでは最初に戻るけど、伏線の回収がなかなかよくてスッキリする。何といっても、最後の一文は美しい。このミスでは酷評だった…。2017/01/25
KEI
18
第8回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞受賞作という事で読んでみた。んっ? 新人とは思えない筆力。詰まった文面にはちょっと手こずったが、フェルメールの仮説や、松本清張の小説にリンクさせる手法など、なかなか手が込んでいた。島田荘司だと、この内容は恐らく500頁超の作品になるんだろうな(笑)2016/06/30
hydrangea
14
松本清張氏の作品とのリンクに加えて虚実入り交じったような物語が淡々と進むのですが、自分の生年以前の事情なども描かれており興味を惹かれる箇所は幾つか出てきました。勝手に美術ミステリのようなものを想像してましたが、ちょっと方向は異なりますね。著者の嗜好は結びの一文からも察せられます。2018/04/29