内容説明
二〇〇〇年に児童虐待防止法が施行され、行政の虐待対応が本格化した。しかし、それ以降も、虐待で子どもの命が奪われる事件は後を絶たない。長年、児童相談所で虐待問題に取り組んできた著者が、多くの実例を検証し、様々な態様、発生の要因を考察。変容する家族や社会のあり様に着目し、問題の克服へ向けて具体的に提言する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
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38
「児童権利条約」を根幹に据え、子どもを保護するという立場を越え、子どもの生きる権利の保障という観点から虐待死を捉える。その立場から、新生児殺害(遺棄)や心中も虐待死の範疇に入るという視点は新鮮かつ重要に思った。各ケースを網羅しており、問題の所在を知るには十分な内容。6章で語られる児童相談所の業務量の著しい増加が、人々の児相に対する「正しい」責任追及に由来するが、かえって過重(1日5件の安全確認は想像を絶する)を招き児相の対応の質的低下をもたらしかねないという指摘は、多くの「正しい」人々が共有すべき。2019/08/05
ゆう。
28
虐待死が社会問題となり、福祉行政の対応にも社会的関心と批判が強まっている。しかし、実際のところは見えないところも多い。子どもの権利条約の時代だからこそ、虐待死に向き合う社会であってほしい。2019/11/25
ひろか
13
著者以外には書けない本。最後の章に、もっとたくさんのメッセージがほしかったが、現場で働く人にとって勇気をもらう。少しで社会に届けばうれしい。2019/07/28
寝落ち6段
11
虐待死の痛ましさは、皆が知るところだろう。その背景は、系統立てられるかもしれないが、家庭により様々で特定の方法では解決できない。法制度は大きな事件があるたびに、変化を遂げているが、まだまだ未然に防ぐほどのものになってはいない。現場では、一人が何件も事例を抱え、あまりにも過酷な状況による慢性的な人手不足と、予算不足に喘いでいる。実際に虐待の現場に関わったことがあるが、通告から措置まで綿密に配慮をしていくので、精神的な疲労が強烈だった。虐待は発見もだが、やはり防止が最重要だ。既に被害者になったら遅い状態だ。2020/05/05
てくてく
8
児童虐待死をめぐる歴史的な流れや分類毎の特徴を解説しており、教科書として最適。親子心中を児童虐待の一類型としているところに一瞬戸惑ったが、言われてみれば確かに児童虐待としか言いようがないと思った。2019/09/21