- ホーム
- > 電子書籍
- > 教養文庫・新書・選書
内容説明
繰り返し大水害に遭う人工都市江戸で、どんな対策と復興策が採られたか。経済的利益と安全、縦割り行政、民意の黙殺など、今に通ずる問題満載のそのありようをたどる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アメヲトコ
9
寛保2年(1742)の大水害の教訓は活かされたのか。災害都市・江戸がそれ以降どのようなかたちで水害と向き合ってきたかを論じたブックレットです。三俣中洲の開発と深川洲崎のクリアランスという対照的な事例は、東日本大震災の津波被災地の復興をめぐる問題を想起させ、現代を生きるわれわれにとっても重い課題を投げかけています。2020/03/14
パトラッシュ
7
80頁弱の軽く薄い本だが内容は深く重い。寛政の改革を担った老中松平定信の江戸の水害対策は藤田覚氏の定信伝でも言及されていない地味なテーマだが、繰り返される水害に悩む現代日本にとって身近な話だ。1742年に4千人近い死者を出す大水害に襲われた教訓を生かさず、地元助成のため隅田川下流に土地が造成された。定信が本所深川地区をほぼ水没させた1786年の隅田川氾濫の原因としてこの田沼時代の造成地を撤去し、沿岸地嵩上げや洪水対処マニュアル作成などの対策を打つ有様は、縦割り行政が当時と変わらない事実を我々に突きつける。2020/02/15
見もの・読みもの日記
6
寛保2年の水害で隅田川の浚渫が必要なことが意識されていたにもかかわらず、中洲新地を造成し、天明6年の大水害を招いてしまう。江戸の水害対策には、よい面でも悪い面でも現代に通じるものがあると感じた。また土地の歴史を知っていると、浮世絵の名所絵を見ても違った感慨が湧く。2020/03/28
bapaksejahtera
4
寛政期に行われた三俣中洲(明和期に造成された江戸名所でもあった)撤去と深川洲崎水害除け地の設定という、江戸下町のうち極めて限られた地域及び時代の事業を取り上げて、今日にも通じる大きな都市防災問題を論ずる。本書の背景には利根川の東遷がある。私見ながら元和偃武は土木技術を軍事から農業目的に転じ、農業生産増と都市人口増を齎した。利根川東遷は近代に至るまで東京を悩ました防災大事業でもあった。本書は防災に係る都市行政政策と社会・財政的影響の相互関係をコンパクトな冊子に纏めて提示する啓蒙的な書籍となっている。2020/03/25
キミ兄
4
わずか100ページだが江戸時代の市井の実情が浮き上がる名作。最近の災害で感じるこの民衆の圧力って江戸時代と現代で変わってない。現代だっていくらでも暴動は起きる。☆☆☆。2020/01/24