内容説明
もしあなたが今、このうえなく大切な何かを失って、
暗闇のなかにいるとしたら、この本をおすすめしたい――(解説・俵万智)
宮沢賢治、須賀敦子、神谷美恵子、リルケ、プラトン、小林英雄、ユングらの、
死者や哀しみや孤独について書かれた文章を読み解き、人間の絶望と癒しをそこに見出す26編。
「言葉にならないことで全身が満たされたとき人は、言葉との関係をもっとも深める」
―-自らの深い悲しみの経験を得た著者が、その魂を賭けて言葉を味わい、深い癒しと示唆を与えてくれる26編。
「一日一編読んでいる」
「自分の無意識のどこかに必ず染みてきて、涙がにじむ」
「どんな仕事でもそれを支えているのは、『語り得ない何か』。その一つが悲しみである、という言葉の凄さに慰められた」
日経新聞連載時から話題を呼び、静かなロングセラーとなった一冊。
東日本大震災後の福島にて、柳美里さんが営む書店「フルハウス」では2018年売り上げベスト6位に本書が入っている。
文庫化に際して「死者の季節」「あとがき」を増補。
解説・俵万智
※この電子書籍は2015年11月にナナロク社より刊行された単行本『若松英輔エッセイ集 悲しみの秘義』の文庫版を底本としています。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はっせー
163
ある番組で死にたくなったら読む本として紹介されていたので読んでみた。悲しみって人生に必要なんだなって思わしてくれる本だった!著者の若松英輔さんが色んな方の言葉を紹介して新しい輝きを与えている。私が心に残っている言葉は越智保夫さんの言葉である。人間を上から見ている人は、自分も同じ人間であることを忘れている。物がよく見えすぎている。高い所に行くのではなく低くて空気の濃厚な場所へ。そんな言葉が印象に残っている。没頭の没も沈むことを意味する。目標は高いよりも低くて深いことの方が案外面白いかなって思った!2022/01/06
KAZOO
129
若松さんのエッセイ集で日経新聞に連載されていたもので読んでいて思い出しました。ご自分の読んだ様々な書物から心にしみた文章をピックアップされて語られています。人柄がわかるような感じの選び方をされている気がしました。私も読書した後にこのような言葉を書いていきたい気がしました。2020/01/31
mukimi
125
audibleの2.5倍速で聴き始めてすぐ、これは文字を追い線を引き読みたい本だと思って読み直した。最愛の妻を亡くすという大きな悲しみを背負った筆者により、深い悲しみの中で紡がれた哲学者や詩人たちの涙の結晶のような言葉が掬い上げられ、丁寧に届けられる。悲しみは人と比べられないけれど、歴史の中にも同じ時代の人たちの中にも、悲しみを背負って生きた勇者達がいた。それを教えてくれるこの本によってどれだけの人が救われるだろう。小さな本に噛み締めたい言葉が並ぶ。精神的非常事態に思い出したい一冊として本棚に並べる。2023/11/21
いこ
105
NHKに「理想的本箱」という番組がある。毎回テーマに沿った3冊の本を紹介してくれる。この本は「もう死にたいと思った時に読む本」の回で紹介された、「悲しみとは何か」を考え抜いたエッセイ25編。人生の困難に直面した時、人は無意識に「言葉」を探すのだそう。自分の中の言葉にできない想いを、小説や詩などに求めるのだという。著者の提案は、人の言葉ではなく、自らが求める言葉を書いてみようということ。書くと知り得なかった人生の意味に気づくという。そこここに胸に響く言葉のある良書であった。勿論、本はまた付箋だらけになった。2022/10/30
venturingbeyond
101
読み応えのあるエッセイ集だった。読むことにも教養が必要なこと、批評が文学にとって必須の要素であることが改めてすとんと落ちる好著。個人的には、「14 花の供養に」と「23 彼女」、「25 文学の経験」がベスト3。2020/07/16