内容説明
権謀術数を駆使して美濃の蝮と恐れられた名将・斎藤道三の孫、龍興は酒と女に?れて戦
嫌い。だが、織田信長に国を追われて流浪するうち、武芸に励み、兵法を学びながら次第に
合戦の虜に。何度も信長に挑み、追い詰めていく……。愚将と呼ばれながらも、群雄割拠
の時代の魔王に怯まず対峙し、家臣や民を愛し続けた斎藤龍興とは何者か。戦国一代記。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
W-G
302
火坂雅志『軍師の門』を読み終わった直後に、書店で見つけて購入。斎藤龍興と竹中半兵衛の、人物像の定説を華麗に覆して、魅力的な物語に仕立て上げている。三国志でいう、呉の周瑜のように描かれることの多い竹中半兵衛が、ずいぶんと矮小な男となっており、反して、斎藤龍興が颯爽としていること、ちょっとしたパラレルワールド。駄目人間なのは稲葉山城時代の第一章くらいで、二章以降は好感度うなぎ登り。こういう、陽の当たらない武将にフォーカスして空想を膨らませた物語は、上手くやればかなり面白い。この作品は成功例の一つ。2020/06/15
岡本
103
世間一般では竹中半兵衛に小勢で城を追われ、信長に美濃を奪われた愚将として知られる斎藤龍興が主人公。漫画「センゴク」でも信長を倒す事に執着するキャラだったが、本作の龍興は成長の過程でカリスマ性も身に付けていく。ここまで龍興が格好良く描かれた作品は初見。善人で欲のない描かれ方が多く見られる竹中半兵衛が本作では野心に駆られて稲葉山城を乗っ取るという珍しい半兵衛に。定説とは異なる人物像が随所に見られて読み応えのある一冊でした。2020/02/22
hrmt
40
天野作品3作目。以前読んだ今川氏真も宇喜多秀家も、本書の斎藤龍興も、敗れてなお生き延びた武将のその後は殆ど興味を持たれない。けれど表舞台に名が現れなくても、当然その人生は終わりの時まで続く。祖父と父を名将に持ち、暗愚と言われた龍興が、国主の立場を追われようやく将器に目覚めたなら皮肉な事だ。美濃を取り戻そうと再起する龍興、軍師として名を揚げたい半兵衛。二人は建前を唱えながら戦いの高揚感に埋没し、容赦ない殺戮に天下平定の大義を考えていく。終章は作者の創作だろうが、そんな結末もあってもいいのではないかと思えた。2020/02/05
如水
32
蝮の孫…斎藤龍興が主人公。龍興って誰?美濃の国斉藤氏三代目=信長に滅ぼされた人です。『暗愚の象徴』とされていますが、大名じゃ無くなった後が凄かった💧信長にゲリラ攻撃を散々に仕掛け、一時期は信長を絶望の淵迄起たせた男…と言うのが史実ですが、この話ではif龍興ですね😁しかしこの作者は登場人物の心情を語るのが上手い!!&現代風。竹中半兵衛が出仕した理由がまさか😱現代風の思考を持つ戦国武将達。其処が良いトコロ。後、越中の九右ェ門をモチーフにしているので史実では無いと思われそうで実は…と言う所がミソかなぁ❓2019/12/20
onasu
22
先日読んだ「酔象の流儀」でも、朝倉家の客将として名のあった斎藤龍興。信長に美濃を追われた愚将というのが専らだが…。 酒色に溺れて云々はおくとして、国衆に見限られて追われたのは史実。なので、その前に竹中半兵衛に城を乗っ取られた際、半兵衛張りの戦術で奪い返したというはおもしろい。 その後は堺にあって、信長の影が迫った折りに、会合衆の援助もあって信長を討とうと起ち上がり、対する半兵衛と対で綴られていくのも好構成。 最期は朝倉家と共にというが、例によって別説も。眉唾ものだろうが、小説としてはいい締めでした。2021/02/08