内容説明
これまで看過されてきた想像力(Einbildungskraft)の理論をその全体像において示し、カントのテクストにそくして「啓蒙の循環」という問題に対する方策を提示することにある。中間的な存在者としての人間の、やはり中間的な能力としての想像力に照明をあてることによって、カントの批判哲学を本来のダイナミズムにおいて提示しようとする試みである。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Bevel
1
モチベーションとしては、義務と幸福に引き裂かれる現象としての私のあり方の記述をうまくまとめた研究書ないかなという感じ。「啓蒙の循環」を打ち破る出発点としての感情の伝達可能性、そして社交的な関係に関わる想像力の領域を描き出すもの。なんか方法とやりたいことがちぐはぐというのが感想。先行研究を丁寧に追って、どちらかという分析的スタイルで批判哲学を再構成しようとするのだけど、著者がやりたいのは領域横断的で大陸的な問題設定なので、苦慮しつつ結局骨組みの形式的な話になってるように思う。歴史哲学を扱う第四章が面白かった2022/05/22