内容説明
古い洋館アパート、かなりや荘。そこには心に傷を抱えた人々が集まるという……。雪のクリスマスイブの夜、バイト先を辞めさせられたうえ、母親が失踪し、家を追い出された茜音は、不思議な偶然からかなりや荘に辿り着いた。絵を描くことが大好きだった茜音は、その才能を住人の一人の元漫画編集者に注目される。さらに彼女の部屋に、若くして亡くなった天才漫画家の幽霊・玲司が現れて……。優しく力強い、回復と救済の物語、シリーズ第一弾。新たに書下ろし番外編を加えて新登場。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さてさて
111
『「かなりや荘」という名前には、歌声と癒やしがある』という『風早の街』のアパートを舞台に描かれるこの作品。忙しい日常に疲れた人々がアパートでの穏やかな日々を暮らす中で次の新たなる旅立ちへの力を蓄えていきます。そして、そのアパートの中で人々の活力の源となったのは、人と人との出会いでした。そんな毎日の中で『いつか唄を思い出す』という『かなりや荘』に暮らす人々の物語。乱暴に扱うと壊れてしまいそうな優しく繊細な表現に満ち溢れたこの作品。ああ、なんて美しく澄んだ世界観なんだろう、ふうっ、と、ため息の出る絶品でした。2021/01/23
のんき
83
雪のクリスマスイブの夜に、母が失踪、住む家もない茜音。偶然たどり着いたのがカナリヤ荘。茜音も良かったけど、カナリヤ荘のみんな、そして、幽霊も怖くなく、いい人ばかり。心が優しくほっこりなります。茜音は絵や漫画が好き。描くのも好き。もしかしたら、これから有名な漫画家になっていくのかも。一枚の絵や漫画が、中東の難民に生きる希望を与えたり、見た人が幸せな気持ち、温かい気持ちにさせる力があるってすごいです。そして、それを職業としてる人も、そんな絵や漫画が描けてスゴイ。わたしも人を幸せにできるようなことができたらな2019/12/28
佐島楓
59
オレンジ文庫で展開されていた世界が、版元を変えて登場。ということは、さらなる続編を期待してもよろしいのでしょうか。好きなシリーズだったので、楽しみです。2019/11/16
涼
58
http://naym1.cocolog-nifty.com/tetsuya/2024/07/post-d9b16e.html 思いがけず後味のいい本でした。主人公の母親には、まったく同意できませんが。2024/07/12
ケロリーヌ@ベルばら同盟
57
大変美しく、優しく、心地好い文章なのに、何故か、読み進めるに従い、姿勢を正していました。村山早紀さんの作品には、一冊の本に携わる全ての創り手の想いが込められていると感じます。…となれば、受け取り手の読者の背筋も自ずから伸びるというもの。クリスマスだけ真夜中に鐘が鳴らされる風早の街。そんな優しい奇跡が息づくこの街で、絵を描くこと、人と関わる事が大好きな女の子の夢が翔きます。大切に読み続けてゆきたいシリーズです。2021/01/19