内容説明
廃藩置県(明治4年7月)後も混乱が続く日本。そんな中、西郷隆盛は同年11月に欧米使節団を送り出すと、留守政府のトップ=事実上の首相として、内政、外交、財政など日本の国づくり、新政府の立て直しに着手する――。近代日本の礎を築いた西郷と同内閣を支え活躍した男たちの「1年10カ月」を、時系列でドラマ的に描いたノンフィクションノベルズ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パット長月
5
文庫書下ろしで、来年の大河人気に乗っかったお手軽な読み物かと手に取ったが、期待を大きく裏切るズッシリ中身の詰まった作品。維新後いったん鹿児島に帰った西郷さんが政府に戻り、明治十六年の政変で下野するまでの、内憂外患のなか明治政府の礎を築いた獅子奮迅の働きぶりを詳細に描写している。本書を読む限り西郷株アップ、大久保株ダウン。西郷さんは維新で終わり、ではない。西南戦争という大いなる謎ゆえに理解困難な存在だが、いかに緻密で極めて有能な政治家であったことの一端がわかり、西郷さんが世に出たことに関して、納得がいく。2017/12/09
マリーゴールド
4
西郷さんの上京から下野までの明治四年四月から六年十月の間に起こった出来事を時系列に小説仕立てで描いた本。しかし、内容以前に校正が全くなってなくて、かなり興を削がれた。特に最初のほうでは主語が違うのか意味が取りにくかったり、日付の間違いも散見された。関西・九州(鹿児島含む)への明治天皇の行幸や習志野大演習、それから、東京での西郷さんの住まいを始め主要閣僚が住んだ旧大名屋敷、仮皇居となった赤坂離宮、陸軍関係施設等、当時政府に使用された建物や場所の説明が比較的丁寧で興味深く読んだ。2019/03/16
シノウ
1
岩倉や大久保の外遊中、留守を預かった西郷内閣を再現した時代小説。 藩閥のしがらみや、士族の扱い。アジアを席巻する欧米列強の脅威に対し、いかに速やかに日本を近代化して対抗するか。緊迫感のある時代の情景を想像できた。2017/12/13
匂當内侍
0
明治4年〜6年国内感心である。2022/11/24
オサム
0
私は西郷隆盛を日本史上最大の人物だと断じているが、その意を更に強くする本だった。確かに、条約改正を除いては明治国家の基礎は岩倉・大久保・木戸らの渡欧中に築かれており、その時期は西郷が「実質総理」として機能していたわけである。朝鮮への軍事派遣を尚早とした西郷が「征韓論が容れられぬのを不満として下野。不平士族を率いて西南戦争を起こした」と歴史教科書に記述されてきたのも、歴史は勝者が作るものだということを示しているのだろう。校正漏れが散見されるし、文章も通りがいいとは言えないが、作者の取材努力に敬意を表する。2020/12/17