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内容説明
平等な社会に思いを馳せ、共産主義に傾倒していた20世紀前半の知識人たち。ジッドもまた壮大な実験場となったソ連を嬉々として訪れたものの、旅行客向けに案内される綺麗な施設の裏には……作家は透徹した目で、服従と順応を強いる体制、人々の貧しさ、官僚の欺瞞を看破していく。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
149
ジイドに対して女々しく弱い印象を持っていた事を謝りたい。ペンを持った彼の強さに敬服。すでにスターリンによる粛清が行われていた1936年。ドイツにおいてはヒトラーが前面に出ている。フランスでは、社会主義革命に賛同する知識人達はソビエトを礼賛していた。その中、ソ連に客として同行者五名と訪れたジイドは、ソ連の真実を見抜き告発する。それについて左からも右からも攻撃を受けたジイドはさらにそれに反論する手記を翌年に発表した。『理想』から『政治』への移行がもたらした執行部の『退廃』と『嘘』をジイドは恐れず暴く。2019/05/31
ケイ
132
コンゴ紀行を読んだので、旅行の順に合わせこちらも再読。コンゴでは、現地のエキゾシズムに情感を刺激され、時に冷静な視線を逸脱している印象もあった。ソビエトでは、流される事無く、差し出されたものをそのまま見ず、自らの見方で、ヒューマ二スティックな観点から冷静に見極め、身の危険も顧みず、かける範囲で筆をとり、帰国後に原註の形で補足された文章のみごとさ。共産主義とはともすればどういうものであるか、どういう危険性を孕んでいるのか、理想と現実の乖離の仕方など、一読すべき内容。特にベルリンの壁を知らない世代におすすめ。2021/10/27
ふみあき
73
「私にとって何よりも優先されるべき党など存在しない。どんな党であれ、私は党そのものよりも真実の方を好む」とジッドは語るが、現在に至るまで(特に知識人と呼ばれる階級の人々には)なかなか実践できることではない。ソ連に対する擁護と批判の間を揺れまくる本書の筆致は、むしろ著者の知的誠実さを如実に示している。巻末の訳者解説では、本書刊行当時の日本での受容(と反発)について言及されており、すこぶる興味深い。2024/11/23
HANA
71
第二次世界大戦前、共産主義が理想とされていた時代。ソ連に招待されたジッドがその印象を綴った旅行記。本書の凄い所は参加したのが共産圏のパッケージツアーでありながら、理想の国の背後に隠された全体主義を鋭く見抜いている所か。日本にも北朝鮮を最後まで地上の楽園と言っていた自称知識人が多かったけれども、何だろうなあこの違い、やっぱり知性の差かなあ。両者を比較するに本書のような旅行記は如何に党派性を超越するかが肝だと思う。本書発表後「転向」が攻められたが、ジッドのような人道主義者にとってそれは必然だった気もするかな。2022/04/10
molysk
45
1936年、フランスの作家ジッドは、招待に応じてソ連を旅行する。社会主義の理想を実現した国家を目撃するために。だが、ジッドが目にしたのは、独裁下で抑圧され、かつてと変わらぬ貧しさに喘ぐ人々と、伸長する官僚制によって理想から貶められた、社会主義の現実であった。ジッドは素朴な人道主義者であった。旅行の前に示していた社会主義への称賛から、一転してその欺瞞を喝破するべく本書を執筆する。現在も、権威主義国家はなくなるどころか、数を増しているように見える。それゆえ、ジッドの愛情ある熱意にまぶしさを感じるのである。2020/07/27
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