内容説明
第二次大戦下、神戸トーアロードの奇妙なホテル。“東京の何もかも”から脱走した私はここに滞在した。エジプト人、白系ロシヤ人など、外国人たちが居据わり、ドイツ潜水艦の水兵が女性目当てに訪れる。死と隣り合わせながらも祝祭的だった日々。港町神戸にしか存在しなかったコスモポリタニズムが、新興俳句の鬼才の魂と化学反応を起こして生まれた、魔術のような二篇。(解説・森見登美彦)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
コットン
91
自由な俳人の著者による散文。空襲以前の神戸の国際ホテルやその後の「漫画のようにデフォルメされた生活を送る」著者やバーのマダム達や外国人がユーモラスに愛らしく描かれる。著者のこの執筆の目的を「私が事に当たるたびに痛感する阿保さ加減を、かくす所なくさらけ出しておきたいのである。」と、人を食ったようなセンス!解説が森見登美彦なのもナルホドと思う。2020/05/17
rico
87
え、神戸ってこんな街だっけ?第二次大戦下の怪しげなホテル。そこで暮らすのは得体の知れない外国人たち、身体と引き換えに日々の糧を得る女性たち。かつての九龍城あたりにありそうな魔窟のイメージ。作者は俳句界の鬼才と呼ばれた人物。実体験に基づくものらしいが、破天荒で好き勝手やってるのに、妙にお人好しで憎めない。死がいつもそばにある日々。住人たちの凄絶な人生。重い物語が、俳人らしい最小限の言葉で淡々と語られる。現実感がなく、極彩色の幻灯のよう。ぽっかり出現した異界にしばし迷い込んでみようか。森見さんの解説が秀逸。2019/09/13
はっせー
86
今年ラストの本。これで読み納め。ちょっと古い小説が好きな人や神戸が好きな人にぜひ読んでほしい本になっている!主人公が東京から逃げるために神戸に来たことから始まる。そしてあるホテルを定宿として過ごしそこにいる宿泊客(主人公と同じような人)との絡みやそのホテルでの出来事まとめたものになっている。戦争中にも関わらず海外の人や水商売の女性たちが堂々と歩く神戸。やはりコスモポリタン的な場所である。そこでの出来事は不思議な匂いが立ち込めるものであり、まるで海外のマルシェに来たのではないかと勘違いするほどであった!2022/12/31
masa
68
神戸で生まれ育った。他人に干渉せず、ええかっこしいで八方美人、そんな街だ。大阪の絶望的なええ加減さにも京都の上から目線ないけずにも簡単に同調するし主張しないけれど、腹の底ではみんな神戸市民であることを誇っている。播州方面出身の者が面倒な説明を避けるために故郷は神戸だと名乗るとムッとするし、隣接する明石すら意識し、区別している。(そして今や、客観的に街の魅力では完敗だ)。そんな空気感に疲れ、大学選びの際に神戸から逃げ、就職は大阪でしたのに、気がつけば戻っていた。鼻につく街だけど、やっぱり僕は神戸っ子なのだ。2022/09/17
HANA
68
戦時下の神戸をホテルで過ごしていた著者とホテルを巡る様々な人間模様。戦時下という閉塞状況にも関わらず、登場している人物は極めて明るく独特の雰囲気を醸し出しており、何とも魅力的。各人が神戸という独特のコスモポリタリズムを持つ町を体現しているというか、読み進めていくうちにこの町自体が主人公ではないかという気分になってくる。解説で触れられているように、現実の神戸を描いているのにそれが千夜一夜的な魔都に変容していくのは、まことに文章の魔力と言えるような。通った事のある神戸もトアロードも、別世界の魅力を放っていた。2019/08/23
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