内容説明
哲学の以前に、我々は常識において、また科学において、現実を知っている。しかし、哲学は常識の単なる延長でもなければ、科学の単なる拡張でもない。では、哲学とは何か。現実の生活から出発して、人間生活の中における常識と科学と哲学の機能を明らかにし、つねに現実から問題を汲み上げつつ哲学的諸概念を展開した画期的な入門書。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
131
三木清の哲学入門です。全集版で読んだときはほかの論文と比べて優しかったせいか、読みやすい気がしました。ただこの小論だけをこのような新書で読もうとするとやはり入門とは言いながら歯ごたえのあるものと感じました。序論だけ読んでもいいのかもしれません。知識と行為の問題となると本格的な哲学論です。2016/03/20
kochi
18
三木清は、京大で西田幾多郎に教えを受け、後にドイツ留学ではハイデッガーに師事するなど、戦前戦中を代表する哲学者である。微罪だが治安維持法で拘留され、終戦直後に東京拘置所にて死亡したという。本書では、議論の前提となる用語などについて序論で述べ、認識論、道徳論が議論されている。哲学的文章というものに慣れてみようという動機から読み始めたのだが、ロジックを追いかけるためには、常に著者が、今、どの論点に意識があるかを把握しながら読み進める必要があり、十分すぎる歯ごたえに、内容についてはまた今度…2019/12/25
nobody
13
言語体系・論理体系が異なる。楔形文字をそのまま読むに等しい。厳粛に講演に迎えた講師が暴れ回って講堂を破壊し尽くしたようなものだ。後藤平『哲学とは何か』とこの2冊から哲学の基礎をまとめよという課題が出たら発狂して首を吊るしかない。私は全文を文構成から解釈し、もてる語彙力を絞り出し切って読んだが「お前の頭が悪いだけだろう」と思われるのがオチなのでいい方を替えよう。辞書の説明が、あるいは高校教科書よりも小学教科書の方が晦渋な表現だったとしても、なおあなたはその辞書と小学教科書は破綻していると看做さないだろうか。2023/03/27
CCC
10
読んでて落ち着く。『人生論ノート』はそれほど波長が合わなかったけれど、こちらはストンと腑に落ちた。文の流れが美しい。2015/05/03
うえ
8
「道徳はすべて我と汝の関係の認められるところに成立する」「すべての道徳は、ひとが徳のある人間になるべきことを要求している。徳のある人間とは、徳のある行為をする者のことである。徳は何よりも働きに属している。有徳の人も、働かない場合、ただ可能的に徳があるといわれるのであって、現実的に徳があるとはいわれない」2017/11/02