講談社学術文庫<br> お金の改革論

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講談社学術文庫
お金の改革論

  • ISBN:9784062922456

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内容説明

インフレは投資家に対し不公正で、デフレは借り手に不公正。
ケインズの代表作を、わかりやすい訳で読む!

第一次世界大戦後、世界中で起きた急激な物価水準変動に対し、ケインズは何を考えたか。
物価安定か、為替の安定か。金本位制をどうとらえるか。
「邪悪な現実」と格闘するケインズの思考が、ここにはのこされている。

[本書の価値とぼくたちにとっての意義―訳者から]
 まず本書で重要なのは、インフレとデフレの相対的な被害についての明示だろう。1990年代からの20年以上にわたり、日本経済はデフレに苦しんできた。2013年に日本銀行が黒田東彦総裁の指揮下で2パーセントのインフレ目標政策をはっきり採用し、そのために大規模緩和(黒田総裁は「量的・質的金融緩和(QQE)」と呼んでいるが、あまり名称としては普及していない)を行ったことで、執筆時点ではようやくデフレの時代が終わりつつあるようだ。だが、デフレが有害だという認識が浸透するにはあまりに時間がかかりすぎた。デフレは物価が安くなるんだからいいものなんだ、という「よいデフレ」論を、高名な経済学者を含む多くの「有識者」なる人々が言いつのっていた。本書に書かれた認識―デフレは生産者に負担を与え、生産活動を控えさせ、人々を失業に追いやり、喜ぶのは既得権益を持った金持ちばかり―がもっと浸透していれば。
 ここは重要なポイントだ。インフレやデフレは、実体経済に影響を与える。そして本書は、その仕組みについても簡潔に指摘している。お金の市場の状況が実体経済に影響を与え、持続的な失業を引き起こすこともある―これはケインズ『一般理論』の肝だ。本書は『一般理論』ほどきちんと定式化してはいないものの、それにつながる明確な認識がすでにある。
(中略)
 むろん、本書は管理通貨制度の夜明けに書かれたものだし、現在の中央銀行や金融当局ははるかに高度な理論もあり、考えるべき内容もきわめて多い。だがこの基本的な知見は、未だにかわらないものであるはずだ。
 もちろん、もっと歴史的な文書として本書を読むこともできる。金本位制や、いわば「強い通貨」を主張する人々の変な議論は、現在でもいろんなところで見かけるものだ。それを見て、人間の進歩のなさを嘆く/おもしろがることもできる。さらに本書は、ケインズの一、二を争う名言が出てくる本でもある。「長期的には、われわれみんな死んでいる」というもの。経済学者は目先の問題―たとえば失業に対して、長期的にはそれが解決される、と言いたがる。できることは何もないとか、「自然に」任せるべきだとも言う。でも手をこまねいてそんなものを待つだけでは、経済学者も金融当局も存在価値がない。いまできることを考え、実行しよう!

目次

第1章 お金の価値変動が社会に与える影響
第2章 公共財政とお金の価値変化
第3章 お金の理論と為替レートの理論
第4章 通貨政策の目標比較
第5章 将来的なお金の管理についての建設的提言

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

WATA

54
経済学者ケインズがインフレ/デフレの良し悪しについて語った本。まだ金本位制が残っていた時代の本なので、後半の細かい経済分析は時代遅れに感じる。しかし、根幹理論を説明した前半部分は今読んでもスジが通っている。要約すれば、デフレはカネ(現金や債権)をもつ金利生活者に益をもたらし、モノ(設備や商品)をもつ実業家に害をもたらす。インフレはその逆。だから物価は安定させるのが一番良い。インフレ/デフレのどちらかを選べといわれたら、カネもモノも持たない労働者の失業が減るインフレのほうがずっとマシ、という内容。2014/09/04

壱萬参仟縁

19
物価上昇期:実質金利がマイナス(28頁)。賃金は物価の動きに遅れてやってくる。賃金労働者の実質稼ぎは物価上昇期に漸減(33頁)。目減りは否めない。インフレは投資家に大きな損失。実用家にとても有利。インフレは 不公正(傍点)。貯蓄意志の信頼/安心の雰囲気を破壊(36頁)。 通過貨幣nの変化を、現金量の(傍点)インフレ/デフレと呼ぶと便利(80頁)。比率rの上下動を、信用の(傍点)インフレ/デフレと呼ぶ(85頁)。 2015/05/02

手押し戦車

9
経済を物価やお金やデータで判断する学者は多い。人の生活や心理を考慮して日常生活を送って行く事に焦点を当て分析し実行して行き本当の通貨経済が及ぼす影響を捉えている。金本位制で通過を固定為替にしてしまうと通貨を買い支え結果財政難が起きて為替が崩れ、経済危機を見抜き、政府はデフレ不況の対策に有効需要を創出し一時的な失業者対策では無く長期的な視点での財政出動して景気の下支えを行う重要な任務がある。経済を人を中心に捉えることで人を不幸にしてしまう政策を一蹴し人を多く幸せにする政策をして初めて経済が動く。2014/11/27

Hiroshi Higashino

1
「デフレよりインフレのほうがよい」に反論できないのであれば、インフレ政策を進めるべきだと思うのだけど、それをしないというのはお金を持っている金利生活者が強いというのが一面と見ていいのか?そうすると単純な対立する話になってしまいそうだから、もっと広い視点での論が必要だろうけど、そのへんがまだまだしっくりこない・・・2022/10/16

静かな生活

1
‪3.8◼︎ガチガチの経済理論書は本当にはじめてなので判断に困ったが、「市場の自由」をそこまで肯定せずに「管理統制」も肯定しない「価値観の宙吊り」による緊張感がケインズのセンスからくめた気がする。かなり理屈っぽいので巷の噂の通り、ハイエク辺りとは違って所謂文系っぽいものと親和性がありそうだ。‬2020/01/03

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