オーバーストーリー

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オーバーストーリー

  • ISBN:9784105058760

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内容説明

撃墜されるも東南アジアの聖木に救われた兵士、四世代に亘り栗の木を撮影し続けた一族の末裔、感電死から甦った女子大生……アメリカ最後の手つかずの森に聳える巨木に「召命」された彼らの使命とは。南北戦争前のニューヨークから20世紀後半のアメリカ西海岸の「森林戦争」までを描き切る、今年度ピュリッツァー賞受賞作。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ケイ

134
生まれ育った家は、登記では林扱いだったと思う。住宅地にあるのに、それほど木がある。木々にやって来るカラスが煩いと近所から文句もきていた。暗くて寒くて、虫のたくさんでる家は好きではなかったけれど、木に対する親和性は、そのあたりから来てるのだと思う。台風で枝が折れてるのを見ると痛みを感じる。街路樹が育ちすぎて切られた痕をみるたびに悲しくなる。御神木のような太い幹は、いつまでも立っていて欲しいと思う。だから、この登場人物たちと一緒に、私も駆けつけたくなった。どこも、これ以上、切り開かないで欲しい。2019/12/15

NAO

85
アメリカの直接行動による環境運動のピークともいえる1990年の「レッドウッド・サマー」を中心に、南北戦争以前から9・11まで、アメリカの歴史の中で人と樹木の関わりを描く壮大な物語。当時の環境運動家たちの空回りしてしまったかのような行動も、パワーズによって、再び彼らの焦りや怒りが息を吹き返す。よりいっそう切実な問題として。だが、登場人物の一人は、本当に木を救いたかったのか、救いたいのは人間なのではないか、と自問する。これこそが、パワーズの問いかけなのだろう。2020/01/01

南雲吾朗

76
物語りのベースには木が共通してあるが、男女(8?)9人の生き様を描く作品。環境問題、地球の意思、地球のバランス、ガイア。本当に大切なことは何か、それらが解っているにもかかわらず人間の愚かさ、人間の欲、個人の利益、エゴを描く。描くが悔い改めるような強要をしない。人間と他の生物(植物)の時間軸の違いという概念が凄く好きである。リチャード・パワーズの作品は常に人間を描いている。正直だが、もどかしい人々。終盤のパトリシアの演説やニコラスの芸術作品の文章には震えがくる。本当に読み応えのある良い作品であった。2019/12/23

アキ

75
この壮大な物語の主人公はまぎれもなく樹木である。無から地球が生まれ、生物が生まれ、木が地球を覆い尽くす。人間はそんな世界の新参者。木が根を張り枝を伸ばすように、遺伝子が約25%共通する人間も樹状図のような家系図で地球に拡がる。何度も繰り返される人間の生まれ変わりを木はただじっと見つめている。本も木から生まれる。beechがbookの語源となったように、どんな言語も世界の共通祖語は同じだ。多くの寓話のみならず、オイディウス「変身物語」でアポロンに捕まる直前に月桂樹に変身するダフネのように人は木の精霊を聞く⇒2020/01/31

ヘラジカ

63
再読。樹木と共に生き闘った数人の人間を描きながら、アメリカの自然、ひいては社会・歴史全体を概観するという総合小説。前奏となる前半部の独立した複数の人生は、短篇として読んでも相当に面白い。むしろ後半よりもこちらをメインとして読むのも良いと思う。それぞれの人生物語を林立する種類の違う樹木として見ると、多種多様な森林の大規模なメタファーであることが分かる。三部からなる後半も、自ずと地球の未来へと思いを馳せてしまうような儚さがあって、素晴らしいの一言である。森林と密接な生活を送ってる身には刺さる作品だった。2019/10/29

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