内容説明
新次元への扉を開く小説の最進化形!
本当の自分を勝ち取るため、青年は頭と体を鍛え闘いの火蓋を切る。
映画学校を卒業し、アルバイト生活を続ける中山唯生。芸術を志す多くの若者と同じく、彼も自分がより「特別な存在」でありたいと願っていた。そのために唯生はひたすら体を鍛え、思索にふける。閉塞感を強めるこの社会の中で本当に目指すべき存在とは何か?新時代の文学を切り拓く群像新人文学賞受賞作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
106
リズムに慣れるのに時間を要した、リズムに慣れると、バカバカしい若者の凝り固まった青い屁理屈に延々と付き合わさせれるのだが、それが不快でもない。こういう、自己の中で中途半端なまま吐き出されずに溜まった思考エネルギーは滑稽で、痛々しく、結局何も生み出さないまま終わるのだろうが、その着地を見事にしたのは、作者の阿部和重が滑稽な自分を中山唯生にうまく演じさせ、彼が自分に課した鍛錬(それは、まわりをあんぐりとさせるような勘違いから生じたのに)が結局、実を成していたからだろう。最後の唯生のキレ方がロックでよかった。2015/05/20
yoshida
97
阿部和重さんのデビュー作品。阿部和重さんの作品は物語に入り込むまで、時間を要する場合がままある。デビュー作品でもあり本作は尚更か。読みやすい作品ではない。狂気と発露と暴走、そしてカタルシス。阿部和重さんの作品に内包する要素が詰まっている。喜代三と撮影現場に向かうところからカタルシスと回収は始まる。この為に阿部和重さんの作品を読んでいると言っても過言ではない。冒頭でのブルース・リーとジークンドーが回収される場面は笑ってしまう。最後の主人公の振れ幅。この狂気とカタルシスを充分に楽しむことが出来た。2021/02/28
けい
76
阿部和重さんのデビュー作品。主人公中山唯生は「映画」の世界に自己を置き、唯々思案にふけっている。筆者自身を主人公に投影し、戦う姿勢を明らかにする。序盤は理屈ぽく、こねた文章は読み進めるのに苦労する。我慢して読み続けると筆圧が上がって一気に物語が動き出す。洗練される以前の筆者の文章、少し青臭い印象を受けるが、これはこれで魅力的だった。2014/03/10
コットン
66
トリュフォーの同名映画につられて読んでみました。素直だけれど読み手を選ぶ蓮實重彦を少し柔らかくした文体でこの本のリズムに乗り切れなかった感じだったけれど、筆者が映画好きなのがわかり好感触でした。2017/04/09
かみぶくろ
46
3.5/5.0 アート系男子の自意識系自問自答小説であり、通過儀礼的な青春小説でもある。これだけ難解な引用や思考できっちり自問自答できれば大したもので、この主人公はじつはおおいに才能あるんじゃないかと思う。この作者に対する個人的な印象は、難解で饒舌で理屈屋で曲者といったところだが、印象通りのデビュー作だった。2025/04/20