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内容説明
20世紀後半以降、保留地内に建設したカジノによって、インディアンは莫大な収益をあげている。2016年にはラスベガスのカジノ収入を抜き、カジノ産業は実質的にインディアン社会の経済的・社会的・文化的自治の基盤となった。なぜインディアンがカジノを経営するようになったのか? アメリカとの関係からインディアンの歴史を跡づけ、「インディアン・カジノ時代」という新しい時代が到来していることを明らかにする。
目次
第一章 「インディアン」とは何か
第二章 アメリカの建国
第三章 アメリカの良心の揺らぎ
第四章 カジノとインディアン
第五章 インディアン・カジノ時代の到来
第六章 インディアンの自画像
第七章 インディアンはどこへ行くのか
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ネギっ子gen
52
【なぜインディアンはカジノを経営するようになったか】米国先住民の苦闘の歴史を辿りながら、カジノ・ビジネスの光と影を明らかにした書。巻末に参考文献。2019年刊。<1990年代以降、カジノを建設するインディアン部族が急増した。高層ホテルやショッピングモール、映画館や会議場を併設した総合エンターテインメント施設を所有する部族もある。現在、全米で約240もの部族が、500以上のインディアン・カジノを経営する。/インディアン・カジノ産業は、20世紀から21世紀にかけてのアメリカで急成長したビジネスの一つ>だと。⇒2025/03/13
さすらいの雑魚
36
村枝賢一の傑作にREDがある。部族を軍閥に滅ぼされ独り生き残ったインディアンの復讐劇であり彼と仲間達の大河ドラマでもある。本作はRED達の闘争を別の形で継戦したインディアンの今を活写。銃に代え法律と知力で武装し勇気と情熱で人種差別を打払いカジノ産業を手中に収めた彼等は巨額の政治献金で合衆国政府に圧力を加え得る強力な政治力を蓄えた。ラコタ共和国の独立が潰されず在る事も納得な実力だ。長い敗走と屈辱から起ちあがり攻勢にでた先住民族達が歌うのは合衆国よ永遠にか赤い憎しみの歌なのか、ヲタの魂が震え刮目が止まらない。
活字スキー
30
【我々は一つの民族、一つの伝統、そして一つの国家である】現在、全米で240の部族が、500件以上のカジノを経営し、その総収益はかのラスベガスを上回るというインディアンの歴史をまとめた一冊。物理的、経済的、文化的な暴力によって生まれたアメリカという連邦国家の光と影。多くの資料と取材に基づいた丁寧な語りは、アメリカ史に限らず、古今東西そしてこれからの社会の在り方を考える上でも一読の価値あり。2021/03/29
かんがく
18
「インディアン」も「カジノ」もアメリカと聴いて連想する言葉であるが、この双方を結び付けてみたことはなかった。こういう思わぬ結びつきこそが読書の楽しみである。先住民でありながら白人たちによって土地を奪われて保留地に押し込められたインディアンが、自治権を活用してカジノ産業を拡大していく様はアメリカ史の描き方としてとても魅力的だ。カジノ収益が文化継承や社会福祉に使われる一方で、収益の分配をめぐって「非成員化」が進むというナショナリズム的な問題もあり、民族問題を考えるヒントが多数ちりばめられていた。2022/12/09
MUNEKAZ
15
なんとなくネガティブな印象のあるインディアン・カジノを、インディアンが連邦の補助金から経済的に自立する契機としてポジティブに捉えている。鍵は連邦政府が各部族を「 独立国」と見なして、条約を結び居留地に押し込めたこと。幾多の法廷闘争の経て、州の規制の及ばぬ大規模賭博施設を建設したインディアン部族は、そこで獲得した資金を自らのアイデンティティを維持するため、文化施設や教育関連事業に投資する。前半でしっかりインディアンの苦難の歴史を描くことで、彼らがカジノ事業で得た独立の意味合いがよくわかる。勉強になりました。2024/03/10