内容説明
暴力をうけた人はそれを話すことができるだろうか。語ること、聞くこと、伝えることをめぐる、温かく深みのあるエッセイ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ネギっ子gen
80
【我々が複数で存在する限り――すなわち、我々がこの世界で生き、動き、行動する限り、意味があるのは、我々が互いに、そして我々自身と話す内容、そして、話すことで生まれる意味のみだ。(ハンナ・アーレント)】ナチスの強制収容所など、極度の非人間的状況から生還した人たちの証言を紹介し、極限体験が人から言葉を奪う過程を緻密に考察した書。原書は2013年、翻訳は2019年刊。<互いに話し合わねばなりません。なにより、民主主義が、我々が生きる多元性を承認するのみならず、それを絶えず新たに作り直すことができるように>と。⇒2026/02/28
踊る猫
29
著者は様々なトピックについて触れる。トラウマを越えて証言すること、ムスリムへの差別、旅をすること……共通点を(無理矢理に?)見出すならそれは「未知のものを既知の中に見出す」作業の謂ではないかと思う。例えば私はしばしばムスリムをテロリストとして捉え、その反動として(?)信心深い人たちと捉える。だが、それは単に「俗情」(大西巨人)をなぞったものにすぎない。彼らについてもっとよく知り、考えてそこから言葉にすること(その過程に困難さがあるとするならそれはなぜか考えること)。そんな繊細な作業に私たちを誘う一冊と思う2022/02/13
くさてる
25
暴力を受けた人はそれを話すことが出来るだろうか。ホロコースト、ハイチ、ユーゴスラヴィア、アブ・グレイブ、さまざまな場所と時間で暴力の犠牲となった人々は、どうやってその言葉を手に入れることが出来るのだろうか。戦地を取材したジャーナリストの真摯な問いかけに、わたしも読んでいて言葉に詰まる思いになった。聞き手となり語り手となり、あらゆる種類の暴力が組み伏せてきた感情をかたちにする困難さをどう考えていけばいいのか。凄惨な状況も登場しますが、それでもグロテスクさはないのです。静かで冷静で祈りのような文章です。ぜひ。2020/05/23
kei
17
ジャーナリスト、カロリン・エムケのエッセイ。被害者の声を聞くこと、というのはただ話を聞くだけではなく、被害者が「話すことができる」ようにならないと声を聞くことはできないということも含め、難しかったですが、偶然図書館で見つけて読むことができて良かったです。2020/04/27
ケイトKATE
17
注目すべきドイツの女性ジャーナリストのエッセイ。でもエッセイと称するには本書は重い内容が書かれている。本書の大きな主題として、暴力を受けた被害者から証言を得ることの難しさである。暴力は被害者の肉体を傷つけるだけではない。暴力はその体験を被害者自身の心の内に閉じ込めてしまう。それゆえに、被害者が言葉にするのは暴力の衝撃が障害となっている。必要なのは、私たちが被害者の言葉を傾け、紡いでいく手助けをすることである。2019/11/13
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