人は、人を浴びて人になる―心の病にかかった精神科医の、人生をつないでくれた12の出会い

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人は、人を浴びて人になる―心の病にかかった精神科医の、人生をつないでくれた12の出会い

  • ISBN:9784897753621

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内容説明

人生には振り返るといくつかの大切な出会いがある。絶望の一本道で立ちすくんでいた著者に希望を見出させた12の出会いを赤裸々に綴った感動のエッセイ。統合失調症の母を持ち、辛く孤独な幼少時代を過ごした著者。世間への恨みをバネに医者を目指すが、先の見えない絶望感から摂食障害、依存症、リストカットなど心の病にかかり、研修医時代に2度の自殺未遂を起こす。その後、いくつかの「出会い」に遭遇することで、少しずつ人生を肯定して生きられるようになる。自身の生い立ちと共に見つめ直す自伝的エッセイ。

目次

はじめに ずっと誰かに支えられて生きてきた
序章 患者の家族として、患者として、そして医師として
・トライアスロンのような私の人生
・生きている価値がないと思い込んでいた頃
・人が、人によって回復することを信じて
第1章 「患者の家族」としての子供時代
1、人生の最初に助けてくれた……親戚の伯母(おば)さん
・父と母の結婚
・今も忘れない、かわいがってもらった記憶
2、最初に話を聞いてくれた……本の中に出てきたおじいさん
・寒くて暗かった子供時代
・唯一の楽しみだった「読書」と「お絵かき」
・母が無理をして買ってくれた1冊の本
・誰かに話を聞いてもらうということ
3、私の最初の友達……愛犬「コロ」
・かけがえのない友達「コロ」
・わが家の家族の一員、三男の「元気」
4、医師を目指すきっかけとなった……中学時代のいじめっ子達
・北海道から九州への転校
・医師を目指したきっかけ
第2章 自分が「患者」になった時
5、「生きる」ことに気づかせてくれた……医師の同僚と十代の患者さん
・父の再婚
・人の死で分かったこと
・回復するためには時間も必要
6、「人生を楽しむこと」を教えてくれた……「内観(ないかん)療法(りょうほう)」で出会った女性
・薬への依存
・新聞の記事で見つけた「内観療法」
・今も交友が続く友人との出会い
・本能そのままに動ける力を持った人
7、「弱さを見せること」に気づかせてくれた……京都・花街(はなまち)の人
・心の中に、ずんずん入り込んできた姉のような人
・思いもかけなかった100万円の請求書
・蜘蛛(くも)の糸
8、「毅然(きぜん)として生きること」を教えてくれた……親友のすみちゃん
・食べ物が怖い
・「強さ」と「覚悟」をもって生きた親友
・最期まで人を気遣う優しい人
第3章 「医師」として生きると決めた時
9、「おもてなしの心」を教えてくれた……ホスピス医・柏木哲夫先生
・「生きていくこと」と「生きていけないこと」
・「死にゆく人」の気持ちとは
・陰の努力とおもてなしの心から生まれたダジャレ
・患者と医師の関係に必要なユーモアと笑い
10、「笑って受け止めること」を教えてくれた……マンガ家・中村ユキさん
・心の痛みを癒(いや)した「笑い」の力
・初対面は、品川駅で……
・私を変えた「公表」の力
・共に、母を亡くした娘として
11、「自信を持つこと」を教えてくれた……統合失調症のかめちゃん
・これまでとは違う、全く別の世界へ
・「患者」「家族」「医師」、3つの立場で悩むように
・講演会での、かめちゃんとの出会い
・人の幸せは社会的地位では測れない
・かめちゃんからの、はがき
12、同じ価値観を持っている……私の旦那様
・外面が悪く、内面の良い人
・「アモルファスの会」
・善意ある無関心
・結婚式
・「一家の家長」として
・二人で開いた診療所
終章 母と父への手紙
・お母さんへ
・お父さんへの、小さな手紙
あとがき 人は、人との出会いで変わることができる

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ネギっ子gen

67
母の統合失調症と当事者体験を公表した精神科医。前作を読み、著者に感想を綴った手紙を差し上げ、長文の返信を頂き感激した記憶がある。この本は、講演会の場で購入した。座右に置いて、じっくり味読させて頂いております。<人から受けた悲しみや人との関係で生まれた憎しみ・虚無感は、やはり「人との関係」によって修復されていく>という言葉は、過去の、両親の罵り合い、母の妄想からくる暴言等から発する思い――<人は人(の言葉)を浴びて壊れていく>があるからこそ、一層輝く。なお、同じ道産子にして、静岡在住というところに親近感も。2019/09/26

キク

56
著者は母親の統合失調症に苦しみ、研修医時代に2度の自殺未遂の経験がある精神科医師。つまり心のトラブルについて「家族」「当事者」「医師」というそれぞれの立場で関わったことになる。タイトルである「人は、人を浴びて人になる」という格言について、若い頃は「人は、人(の言葉)を浴びて壊れていく」と置き換えていたという。「人の言葉は人を殺す。それが私にとっての真実だった。でも今は人を浴びて確かに人になっていく。心からそう思う」と書いている。多分、どっちも真実なんだと思う。人は、人を壊すし、人によって人にもなる。2021/10/09

たかこ

55
「人を浴びる」とはどういうことか?と興味があったので。統合失調症の母を持ち、自らも精神を病み、精神科医である「家族・当事者・精神科医」のトライアスロンをされた夏苅先生。壮絶な体験から良くここまで回復され、だからこそ心のこもった診療ができる医師になられているのだと思う。2011年と2019年の論文も読んだ。精神疾患に限らず「病」はその家族の人生も変えてしまう。「家族という不条理」の葛藤は自身の成長過程において、なんて重たいものだろう。人と出会い、「語る」ことで回復につながる。ナラティブの力に希望が持てた。2024/09/20

いろは

50
例えば近所に救急車が止まったり、ふと追突事故の現場に出くわしたり、そういう時に野次馬根性で居座る人が、本当に本当に大っ嫌い。なので「善意ある無関心」には多いに共感できた。現役精神科医である著者の生い立ち、自身の心の病、そして現在。テクニカル的に読みやすい本ではなかったが、御本人の経験からでたリアルな臨場感が真っ直ぐ飛び出してきました。「回復に期限はない」良い言葉。★★★2018/05/23

しょうじ@創作「熾火」執筆中。

36
【1回目】図書館本。統合失調症の母を持ち、自らも精神を病みながらも精神科医として歩んだ軌跡を語る。決して洗練された文章とは言えない。むしろ、稚拙でさえある。しかしながら、人が病み、そこから回復するとはどういうことなのかを読者と共に考えていこうという姿勢がうかがえる。人は、たとえ一時病んだとは言っても、人との出会いと交流の中で回復していくというのは、著者の信念に近い。「人を浴びて」人生をつなぎ、人間であることに自分をつないでいく。それで必ず病が癒えるわけではないだろうが、人とのつながりは不可欠なのであろう。2018/09/20

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