内容説明
朝日新聞(読書欄)、読売新聞(「本よみうり堂」)、産経新聞(書評欄)、毎日新聞(「今週の本棚」)をはじめ、北國新聞、北日本新聞、東日本新聞、信濃毎日新聞など各紙で紹介! 第41回サントリー学芸賞(社会・風俗部門)受賞作品。 【本書の内容】ロシアの対外政策を、その特殊な主権観を分析しながら読み解く。今やロシアの勢力圏は旧ソ連諸国、中東、東アジア、そして北極圏へと張り巡らされているが、その狙いはどこにあるのか。北方領土問題のゆくえは。蜜月を迎える中露関係をどう読むか。ウクライナ、グルジア(ジョージア)、バルト三国など、旧ソ連諸国との戦略的関係は。中東政策にみるロシアの野望とは。ロシアの秩序観を知り、国際社会の新たな構図を理解するのに最適の書。北方領土の軍事的価値にも言及。第41回サントリー学芸賞(社会・風俗部門)受賞作品。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まーくん
106
元々著者の専門はロシアの軍事安全保障政策であったという。ウクライナ戦争が始まり、その豊富なロシアの軍事知識に基づいた的確な判断からメディアによく登場するが、見通せなかった事には、率直に判断の甘さや間違いを認める誠実さが好感されている。本書は今次のウクライナ戦争前の著作で2014年のロシアによるクリミア併合を受けて、ロシアの秩序観~「主権」と「勢力圏」を手懸りとして帝国ロシアの地政学について分析している。ロシア(プーチン)の考える主権の概念では軍事・政治同盟の枠内にある場合、上位者にその主権は制限される。⇒2023/09/26
アキ
78
ロシアから見た地政学。ロシア人は地政学と言う言葉が好きらしい。ロシアが介入を起こしている場所はグルジア、ウクライナなど旧ソ連国。ロシア民族の多いウクライナ・ベラルーシはほとんどロシアと思っている。ロシアはドイツでさえ主権国と認めていない。中国やインドなど軍事力も主権もある国のみ主権国とみなす。もちろん日本はアメリカの言うなりの半主権国であり、北方領土に最新の戦闘機を配置しているロシアにとって日本に引き渡すことは露ほど思っていないのだろう。敵を作ることでアイデンティティーを保ってきた。次は北極海が標的になる2019/10/28
南北
77
ロシアの地政学についての本です。すべての主権国家に「主権」が存在するのではなく、政治・軍事同盟の盟主だけが「主権」をもち、「主権」を持つ国の周辺にある中小国は「勢力圏」とするのがロシア流の考え方です。したがって日本やドイツは「主権国家」ではないという発言にもつながるのです。こうした考え方が北方領土やバルト三国・ウクライナなどでどう受け止められているかについて解説されていますので、理解しやすいと思います。天然ガス資源に支えられている部分は価格の変動を織り込んでいないので、やや過大評価のような気がしますが。2020/03/04
ぶ~よん
72
2019年に刊行されたロシアの地政学書。今ほどウクライナとの関係が緊張状態ではなかった時代に、ロシアにとってのウクライナ、或いは旧ソ連を分かりやすく解説してくれる。日本人には理解し難い感情だが、ロシアにとっての国境はフラスコではなく浸透膜のようなものであり、グラデーション状にイメージされているということ。ロシア民族の住む場所には主権が及ぶという考え方で、彼らは彼らなりに侵攻を正当化する理由がある。だからと言って、今日行われている侵攻を正当化する本ではないので、興味のある人にはおすすめの一冊。2025/03/25
syaori
69
「「主権」とは、ごく一部の大国のみが保持しうる」というロシア独特の主権観を通しロシアの対外政策を見てゆく本。そこから浮び上がるのは、少数の「主権国家」がそれぞれに勢力圏を従えて並存するというロシアから見た世界の姿で、そこでは旧ソ連諸国は半主権国家としてロシアの影響下にあり、東欧の民主化支援をする米国は内政に干渉し世界秩序を不安定化している悪ということに。一国の動向は一つの視座からのみ読み解けるとは思いませんが、ウクライナ侵攻におけるロシアの立場もこの視点からだと理解しやすくなるようで、興味深く読みました。2022/10/06