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内容説明
だれもが感じているように、現代ほど「わたしがたり」にあふれかえった時代はこれまでになかった。世界的にその傾向にあるのかもしれないが、日本ではこの傾向がとくに顕著であるようにも思われる。(中略)本書は、私なりの想像力をつけくわえて試みた、自画像の歴史をめぐる、21世紀人のためのツアーである。――セルフポートレイト作品を作り続けてきた美術家が約600年の自画像の歴史をふりかえりながら綴る「実践的自画像論」
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
たま
44
自画像は「描かれた西洋の精神」であるという考えを出発点にカラヴァッジョ、ベラスケス、レンブラント、フェルメール、ゴッホ、フリーダ・カーロ、ウォーホルらを検討し、日本、最後は現代(コスプレや自撮りなど)に至る。論旨の流れは良く分からなかったが、先行の研究を参考に独自の視点を加味した個々の絵画の解説は面白かった。とくにカラヴァッジョとフリーダ・カーロ。両方ともコスプレ的でそれがとても現代的と感じられる。森村氏が名画の人物に扮している作品の面白さはどこから来るのだろうか。自画像の精神性への揺さぶりからだろうか。2022/04/23
trazom
32
ファン・エイク、デューラー、ダ・ヴィンチ、カラヴァッジョ、ベラスケス、レンブラント、フェルメール、ゴッホ、フリーダ・カーロ、ウォーホルという流れで、「自画像のゆくえ」が語られる。そもそも、一枚の自画像も残していないフェルメールに一章が割かれていることからして、この本のユニークさが分かる。大胆な著者の仮説に、時にたじろぎを覚えるが、しかし、この本は、読んでいて面白いことこの上ない。苦悩・克服・探求という厳しい私探しの道のりである自画像を通してこそ、画家の本質が見えてくることを教えられる。とてもいい本だ。2020/02/02
秋 眉雄
22
エイク、デューラー、ダ・ヴィンチ、カラヴァッジョ、ベラスケス、レンブラント、フェルメール、ゴッホ、フリーダ・カーロ、ウォーホル、大正~昭和初期ニッポンの画家たち、それぞれを自画像という観点からその美術的特性や方向性、生き方までが推理を交えつつ語られています。どの章も興味深かったのですが、中でもまるで知らなかったベラスケスについての章やフェルメールの章が素晴らしいです。こういうのを読むと、絵画とかアートに対して今までテキトーに接してきたのがたまらなく勿体なかったなと思わずにはいられませんでした。2023/04/23
夜郎自大
6
美術解説本は初めて。一枚の絵画の読み解き方の一例を示してもらっているようで、興味深く読み進んだ。自画像を画家が描くに至る経緯や背景は様々であるものの、独自の人生経緯、生活環境、時代背景が如実に影響を与えているのだろう。自画像に関係なく、絵画とは画家のあり方が何らかしか反映されているのかもしれないし、後世にそれを鑑賞する者は、無意識に画家の人生観を深読みする。自画像が画家の筆の運びによるものから、誰でもスマホでシャッターを押せる時代へと推移しだが、自己定位との関係で解説するのは一読の価値があった。2020/07/29
ラム
3
新書で六百頁余りの大部、「セルフポートレイト」の森村泰昌が、ファン・エイクからウォーホルまで六百年に渡る絵画史を辿り、「描かれた西洋の精神」を探る旅 日本では明治までこれといった自画像がなかったが、西洋文化に触れて一気に「描かれた西洋の精神」として華開く 東京藝大卒業生の膨大な自画像コレクションから本書の西洋精神探求の旅が始まるが、やがて画家たちが「わたし=人間」を如何に捉えたかに収斂していく カラヴァッジョとベラスケスの章が秀逸 フェルメールは「表向きのわたしを隠すことで隠されたわたし」を露呈させたとか2022/07/28