内容説明
今日も死ななかった。あの帽子を見たために、今日も死なずにすんだ――。一緒に住んでいた女に出ていかれ、切り詰めた生活でひたすら小説を書く40代の男。書けない日々が続き、いつしか死への誘惑に取り憑かれた男に、ある日人探しの依頼が届くが……。虚実のあわいで佇む作家の日常を描く連作小説集。芥川賞作家の新境地作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
40
作家としてのリアリズムが凝縮された短編集だと思いました。不思議でもなければ普通でもない世界観に惹かれます。2024/07/29
あじ
36
不穏の周波数が可聴域(読者)に届かない…ならば田中慎弥を田中慎弥が“共喰い”してしまえばいい。境界線を跨ぎこちら側にすり寄ってきた“たなかしんや”。読み易くなったと同時に読めた気になる、アブラカタブラ。読者を手なずけようと努力しつつ、後半の上り坂で置いてけぼりにする馬力は健在。主人公を取り巻く.(ドット)的な人々、思想や観念の静かな暴発が、非常に不本意ではあるけれど(ふふふっ)気に入りました。2019/06/24
まさ
26
田中慎弥さん初読み。作者の日々が綴られています。行方不明のGのこと、それと関連して母とのやりとり、同棲していた女性との会話…。その内容も文そのものも読みづらかった。読みながら、作者の真意を汲み取ろうと試みるが、なんともわからないまま読了。それこそがねらいなのかな。2019/12/29
いっち
25
死にたい作家の日常。主人公は、名前が田中で40歳の小説家。著者本人にかなり近いので、主人公と同一視してしまう。主人公は、天井裏で首を吊ろうとしたり、線路の中に飛び込もうとしたり、大型車の前に飛び出そうとしたり、死と隣り合わせ。芥川賞作家でも書くのがこれほど辛いのかと驚いた。いつか自殺してしまうんじゃないかと思ってしまう。辛さから逃げるために自殺することは悪いのか。線路や道路に飛び込むのはだめでも、自宅でひっそり死ぬのもだめなのか。家族には迷惑をかけてしまうが、ただそれで開放されるなら……泉鏡花文学賞受賞。2020/01/30
aloha0307
24
ひよこ と 私の好きな おひさま☀ さぞ、ほんわかした物語との予想は...まったくハズレ とても怖い小説です。作家の”書けなさ”をとことん見つめ続けるのです~そこには膨大な空虚が... カツサンドを食べたがる彼女を制止できなかったと、その女が主人公を咎める場面は怖さmax.ですよ。表題は希死願望ゆえに見えた、空が傾く気象現象です「太陽がひよこのように震えてる」 but結末は意外にも軽やかでしたよ。2019/09/07
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