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内容説明
長期にわたって停滞を続ける日本経済。混迷から抜け出せないのはなぜなのか。本書では、その解明を歴史に求め、経済システムを支える日本人の「資本主義の精神」を探究する。強欲な金儲け主義への嫌悪感、ものづくりへの敬意や高品質の追求、個人主義ではなく集団行動の重視など、欧米はもとより、中韓など東アジア諸国とも異なる特質を明らかにする。そのうえで現代日本の経済システム改革への指針を示す。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
102
寺西先生の本は「日本の経済システム」「戦前期日本の金融システム」などを読んできていますが、最近このようなご本を出されているとは知りませんでした。マックス・ウェーヴァーの「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」の日本版を書かれているように感じました。2014年に書かれた「経済行動と宗教」をはじめとして昨年出版された「歴史としての大衆消費社会」とこの本がつながっているような感じのようです。鎌倉新仏教とそこからの流れが現在の日本の資本主義の原点となっていることのようです。前2作も読んでみようかと思いました2018/10/22
coolflat
16
英国の産業革命に始まる資本主義社会が発達する背景には、宗教改革におけるプロテスタンティズムの教理があったとマックス・ウェーバーは主張した。しかし資本主義の精神はプロテスタンティズムが浸透する西洋だけのものではない。非キリスト教社会の東洋でも見られる。なぜか。著者は特に日本において資本主義社会が発達した背景に、日本の宗教改革と呼ばれる鎌倉新仏教の易行化(職業の専門化と分業化をもたらした)に理由を見出している。易行化の結果、仏教の信仰の特質が日常生活の中へ全面的に移行し、人々の経済的行動が求道主義的となった。2020/04/04
かんがく
14
終身雇用とか年功序列についての解説かと思ったら、まさかの鎌倉時代まで遡る思想史だった。ウェーバーの『プロ倫』で語られる西洋型資本主義に対し、日本型資本主義は鎌倉時代の易行化に端を発する仏教道徳を基盤にしたものだと主張。江戸時代に高度成長を迎えたことを宗教と道徳の側面から書いている。やや話が大きすぎる気がするが、著者本人がウェーバーやマルクスのような大きな物語を書きたかったのだというから仕方ない。視点としては面白いかな。2019/05/19
wiki
14
良書、オススメ。「西洋的資本主義の精神がある種の限界に達しているなら、異種の資本主義がその暴走を抑え世界資本主義の調和的発展をもたらすことが必要なのではなかろうか」という観点のもと、日本型資本主義に期待をかける。特に本書の白眉は、日本型資本主義の持つ特性について取り上げるだけでなく、その思想的淵源は一体何かという所まで研究し、その答えは民衆救済を基とした鎌倉新仏教にあるとの結論を導き出した所だ。そのバックボーンは、個人が意図するとしないとに関わらず影響している。キリスト教、儒教、仏教。マクロな所を知れる。2019/02/26
koji
11
著者の「経済行動と宗教」(2014)の続編で、前作を超える感銘と刺激を受けました。要約すると、日本の経済システムの精神は、鎌倉新仏教の易業化による求道主義が「身近な他者」との深い交わりを大事にしたことで成り立ったものということです。ここから様々な解明がなされますが、例えば現在私が携わっている金融について、寺西先生は、日本の銀行が行うべきことは「関係依存的貸出に対するリスクを進んで引き受け、起業に積極的にかかわる競争的な環境と、そうした競争に耐える体質や規模の整備」と説いています、全く同感で納得しました。2019/02/03