内容説明
「空気」が支配する国だった日本の病状がさらに進み、いまや誰もが「気配」を察知することで自縛・自爆する時代に? 「空気」を悪用して開き直る政治家たちと、そのメッセージを先取りする「気配」に身をゆだねる私たち。一億総忖度社会の日本を覆う「気配」の危うさを、さまざまな政治状況、社会的事件、流行現象からあぶり出すフィールドワーク。
「ムカつくものにムカつくと言うのを忘れたくない。個人が物申せば社会の輪郭はボヤけない。今、力のある人たちに、自由気ままに社会を握らせすぎだと思う。この本には、そういう疑念を密封したつもりだ」
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ハイランド
83
日頃微かに感じても見逃したり、そのままほっておいている違和感を掘り下げてくれた良本。国は何故国民を管理し、コントロールしようとするのだろう。膨大な税金を使い宣伝しているマイナンバーカードの目的は、国が国民の健康状態や資産状況、果ては事故歴やと読書傾向まで、一元管理するためである。管理された国民は、やがて国にコマのように使われる運命を辿る。国民を管理したい国の政治家は、私達が苦労して納めた税金にたかるアリのようにしか思えない。だから私達は考えなければならない。違和感の正体を。国が何処に行こうとしているかを。2022/09/17
どんぐり
79
山本七平『「空気」の研究』、そして3・11以降あいまいな日本の心性を再稼働させている「気配」の在り処を、現代の社会問題と社会現象から見つめる評論集。言いたいことも言わずに周りの大きな声に同調し、流されていく日本人。いつのまにか、多くの国民の声を「その場」から排除する体制ができあがっている。この嫌な「気配」に、シニカルな議論を提示するのが、著者の本領とするところである。前著『紋切型社会』同様、舌鋒は鋭く、面白い。2018/12/02
けんとまん1007
54
今の時代への警鐘。以前から感じていたことが、すっきりと言語化されて、整理できた。ますます言葉が軽くなり、視点が近視眼的になり、不可思議な「まともなことが通じない」時代。忘れてはいけないことを忘れさせる、世の中の意図を感じるので、この1冊は、自分の支えになると思う。2018/09/15
とよぽん
44
「今、力のある人たちに、自由気ままに社会を握らせすぎだと思う。」と、あとがきにある。時代や社会の「空気」ではなく「気配」(周囲の状況から何となく感じられるようす)を、著者武田砂鉄さんはほじくって書き出した。知らなかったこと、鈍感でスルーしていたこと、なんとなくモヤモヤしていたこと等々、読みながら怒ったり共感したり納得したりの1冊だった。とんでもない人たちが舵取りをしている。でも、改革するリーダーは現れない。この日本の気配・・・。2019/12/31
ケイティ
34
雑誌のコラムで気になっていて、春から始まったTBSラジオのレギュラーで一気に心掴まれました。視点が独特、というか多くの人が「ん?」とかすめるモヤモヤを見事言語化してくれる。そして、深く鋭い考察と指摘。個人の見解なので偏っていて当然ですが、一切誰にもどこにも忖度をしない姿勢が潔くて信頼できる。ラジオの語り口もそうだが、キレの良さが見事です。 2019/06/09