内容説明
〈ばさばさと股間につかふ扇かな〉――墓石にこの句を刻み、墓碑銘を俳号である「玩亭墓」とのみ記した小説家は、こよなく句作を愛した。人情の機微を卓抜にすくい取る句を選りすぐり、古希と米寿を記念して編まれた句集2冊に、岡野弘彦、長谷川櫂と巻いた未発表の歌仙を併録。生前の姿が浮かび上がる、知と情とユーモア溢れる句の世界。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
田中寛一
12
別の本を読んでいて、丸谷才一の名前が出てきた。以前何冊か小説やエッセーを読んだことがあったので、なにか読んでみようと思って手にする。こんな句もありかと思ったのが「ばさばさと股間につかふ扇かな」「枝豆の跳ねてかくれし忍者ぶり」。後半は丸谷才一・岡野弘彦・長谷川櫂の3人による歌仙。歌仙だけ読んでもよくわからないものが多かったが、その後、岡野・長谷川の「対談丸谷さんと俳句」。この部分で歌仙のそれぞれの句についての思いが語られていて、興味深く読むことができた。一句一句が深い!2022/05/31
gontoshi
1
俳句もいいですね。 時々ニヤリとするような句もあります。2018/03/21
ロータス
1
気に入った句。 「桜桃の茎をしをりに文庫本」「本を持つ案山子もひとつ作らばや」「拝復と書くまで長きふところ手」「買つて来いスパイ小説風邪薬」「去年今年読みつづけたり盛衰記」「白魚にあはせて燗をぬるうせよ」「酔筆の字の大きさや春燈下」「かたつむり耳を澄ませば啼くごとし」「涼しさや愛されるのも一仕事」「文月や星に貸すべき書を選ぶ」「言ひわけのながながし夜の手紙書く」「ぼうとすることがしきたりお元日」「焦げ目まで褒められてゐる雑煮かな」2018/02/25