- ホーム
- > 電子書籍
- > 教養文庫・新書・選書
内容説明
天下泰平の世に形成された「家」は肉親の死を身近にし、最期を悟った者は自の教訓を込めて遺書を記した。それは万感の心情が表れた文章であるとともに、当時の社会が分かる貴重な「史料」である。私たちが教わってきた歴史とは、有名人の業績と大事件のあらましだが、本書では教科書に載らない市井の人々の声に耳を傾ける。遺書という史料を読むことで歴史学を体感しつつ、異なる時代の人生から今に通じるヒントを得る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
Willie the Wildcat
73
仕事/子孫/平和/死後の括りで時代を読み解く。職業が多岐にわたるのみならず、各人の半生を通した哲学・信念が滲む言葉。全てが崇高な話という訳ではないが、喜怒哀楽を感じる文面に心が滲む。本分とは何か?土台は家、仕事などの価値観、自負。滲む時代背景も、12名の言葉に影響。印象的なのが、戦国時代の対比。『浪人・村上道慶』は、武士としてのケジメが滲む。対して、『廻船問屋・間瀬屋佐右衛門』は、戦国時代を踏まえた平和への願い。皮肉なのは、この数十年後には、黒船来航に始まる変革が幕開け。文字に遺すことの意義を再考。2020/07/24
HANA
70
江戸時代は識字率が上がったせいか、様々な文章が残されている。本書はそんな中で無名人が残した遺書を手掛かりに、当時の生きざまや人生観を追った一冊。「金銀よりほかの宝これなく候」とか「心に錠をかけべし」といった忘れがたい言葉を始め、村役人を務める事の戒めや子供の勘当の記録、争いを鎮めるために切腹した元浪人とか、現在ではあまり知られない様々な人々の生き方は読んでいて非常に興味深いものがある。当時と現在、価値観の変遷はあるといえ、子や孫に残す言葉は一脈通じるものがあり、それが本書を一層面白くしているのかな。2021/11/06
キムチ
46
勝手に予測した展開とは大きく異なる中身。がっくりするついでに最後まで批判精神で読了。私の息子世代の筆者、某大史学科の講師。2回生対象に実施された近世資料を読むというトレーニングの内容をベースとしたもの。開幕以来100年余り経ての社会の「遺言」が俎上に載る。12話の様々な状況にある・・と断りを入れているモデルに共通するのは【庶民でない】当時は戦を忘れた幕府統治の下、飢饉の苦しみを訴える暴動が頻発し始める。従い、結婚すら不可の男女の方が圧倒的に多数を占めたであろう。掲載された大尽等は自殺もあるが多くは後世を憂2024/06/26
Kentaro
43
田村吉茂の「子孫訓」のほんの一部だが、極楽へ行く方法として、子孫に対して、読書を勧めている。死後の世界を想像することは、誰しも一度は経験する。地獄と極楽という伝統的な概念は子どもの頃に身につける。しかし、死というものは誰も経験したことのないものであり、当然、極楽や地獄を見た人はいない。とくに、現在の日本人の多くは、死を無だと認識しているようだ。命はかけがえのない一度きりのものであり、あの世などは存在しないと思っている人も多い。その根本には、人とそれ以外の動物の生と死を共通のものと捉える科学的な思考がある。2022/06/05
funkypunkyempty
3
★★☆ 江戸時代の名もない人達の遺言書から何が見えるのか。江戸時代も現代もさして変わりはなかった。つまり、この時代の知らん爺さんの遺言を読んでいるのと変わらない。面白いはずはないよ、そりゃ。2020/01/25




