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内容説明
野間児童文芸賞、小学館文学賞、産経児童出版文化賞大賞、IBBYオナーリスト賞など数々の賞を受賞する岩瀬成子氏の最新長編作品。
柵には半開きになった木の扉がついていて、その扉に「どうぞお入りください」と青色のマジックで書かれた板がぶらさがっていた。
「いやだ。あたしはそんなところへは、ぜったいに入らないから」ときこえた。
えっ。どきんとした。
庭木のむこうからだった。わたしにむかっていったんだろうか。
わたしは耳をすまして、木々にさえぎられて見えない庭のようすをうかがった。
しんとしていた。
だれがいるんだろう。
わたしはぶらさがっている板をもう一度見た。
それから足音を立てないようにして、そっと扉のあいだから庭に入っていった。しかられたら、すぐににげだすつもりだった。ちょっとだけ、のぞいてみたかった。──本文より。
小学五年のわたしと中一の兄は二ヶ月前、母の理想の新しい家、市の西側から東側へ引っ越してきた。この町で通い出した英会話スクールが休講だったので、わたしはふと通ったことのない道へ行ってみたくなる。道のずっと先には道路にまで木の枝が伸びている家があり、白い花がちらほらと咲いて・・・・・・。
日本絵本賞、講談社出版文化賞、ブラチスラバ世界絵本原画展金牌、オランダ銀の石筆賞など受賞の酒井駒子氏による美しい装画にも注目!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゆみねこ
72
小5の朋は2ヶ月前に市内の東側から西側の母の理想の家に引っ越して来た。学校も変わり、将来役に立つからと無理やり通わされることになった英会話スクール。ある日スクールが休講になり、ふと通ったことのない道へ行ってみると。。同じ道なのに違う時間が流れるような不思議な感覚、誰にも相談できない朋の気持ち。母親の気持ちも理解は出来るけれど、子供に押し付けるのは良くないと思った。2020/05/24
モモ
39
小5の朋と中1の晴太は春休みに「母の理想の家」に引っ越した。母に将来のためと言われ通い始めた英会話スクールの近くに、いつもと違う風景を見る。子どもは色々と考えているんだなと、今さらながら思った。中学生になり、今まで親の言うことを聞いていた子が自分の意思で物事を決める。そこはちゃんと尊重しなきゃいけないと我が身を振り返った。酒井駒子さんの絵がぴったりの、しみじみと良い話。2019/11/13
東谷くまみ
34
いや、耳が痛い(笑)お兄ちゃんとの会話、この前うちでも繰り広げられたもの😅手抜き主婦の私なんかよりはるかに頑張るお母さんの言いたい事や気持ちが手に取るようにわかってツラいツラい。私も子供の頃があったはずなんだけど。お兄ちゃんの部屋の扉と思春期の心とが重なって。こういうものなのかもなぁ。開いてると思ったら閉まってて、閉まってると思ったら少し開いてて横顔や背中が見えて。そっと声をかけてみたり見て見ぬふりをしてドアを閉じたり。いつか完全に開いたら、その中にある美しい絵や私の知らない物語を話してくれたらいいな。2020/08/24
信兵衛
28
岩瀬成子作品、やはり素晴らしい。また、酒井駒子さんの挿画も魅力的です。お薦め。2019/11/04
ふう
20
岩瀬成子さん。20年ほど前、子育てにしゃかりきになっていた頃に町の司書さんから薦められて何冊も読んだ。親子の齟齬とタイムスリップを絡ませた構成だが、今読むと親子のギクシャクが何だか遠い世界のようで、まさにタイムスリップしたみたいだった。朋がタイムスリップした先はいかにも、という感じで貸本屋、洗い張りなどのお店があるが、朋より先に、朋がタイムスリップしたことを読者に解らせる小道具として働いているが、霞んで見える。うーん、もどかしい。2022/05/14