内容説明
すぐれた古典文学のひとつである平家物語は何故に長くかつ深く日本人の心をとらえてきたのか。その力は一体どこにあるのか。歴史家でかつ古典文学を深く愛好する著者が、時代についての学問的造詣と清新な感覚とによって、平家物語の文学としての本質を追求し、清盛、義経、義仲ら登場人物の人間像とその運命を生きいきと描く。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬参仟縁
30
義仲(84頁~)だが、作者が都の人間で、地方の事情には疎かった。在地の人間が書いていない(86頁~)。この物語は、個々の人間像ではなく、事件の客観的な進行を物語にするところに特色。義仲の書記役、大夫房覚命は政治上の相談約でもあった悪僧(88頁)。義仲は牛車の乗り方も知らない(90頁)。東国弁で話させている(91頁)。義仲にとって致命的だったのは内部の解体と離反、後白河法皇の動向。法皇は頼朝と結託していた一方、義仲に平家追討を命じた(92頁)。2015/12/14
佐島楓
25
読む順序を間違えた。まず、平家物語原本にあたっていないとよく理解できない内容だった(私には)。2015/02/13
Toska
19
同じ乱世に際会しながら、西行が詩人としての感性で歌の中に時代を凝縮させ、鴨長明が無常観に基づく優れた記録文学を残したのに対し、『平家物語』の作者が選んだのは虚構を通して現実を再現するという方法だった。世の中と人間に対して飽くなき興味を持ち、饒舌に語り尽くす。歴史の研究に生涯を捧げた著者は、こうした「物語精神」を歴史家にも必要不可欠な素質と見、共感していたのかもしれない。2024/11/23
ほうすう
15
平家物語の解説書、歴史学というよりも文学的な面から読み解いている印象が強い。方丈記と平家物語を比したうえでの“平家の方が事実の迫力を読者または聴衆に感じさせるのは、虚構の方がより客観的に事実を表現し得るからである。”といった指摘や“平家物語の作者は、たえず無常や世の空しさを説き、悲哀の感情を歌いあげていながら、(中略)彼は人間が面白くてたまらない性質なのである。平家の作者が名文でもって掻き立てている厭世思想などに騙されてはならない。“といった指摘は実に興味深い。2022/03/14
流之助
13
物語、そして琵琶法師による語り物として平家物語の立ち位置はどういったものだったのか。異本が多く存在する理由とは何か。同時代の歴史物や日記文学との違いは何か。などなど、抄録を引用しての解説が細やかでわかりやすい。歴史モノとしての平家物語ではなく、物語としての側面に目が行き、なぜ読んでいて楽しいのか言語化されていたように思う。2024/01/29
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