内容説明
漢字、漢民族という表現が示すように、漢は中国を象徴する「古典」である。秦を滅亡させ、項羽を破った劉邦が紀元前202年に中国を統一(前漢)。武帝の時代に最盛期を迎える。王莽による簒奪を経て、紀元後25年に光武帝が再統一(後漢)。220年に魏に滅ぼされるまで計400年余り続いた。中国史上最長の統一帝国にして、中国を規定し続けた「儒教国家」はいかに形成されたのか。その興亡の歴史をたどる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
64
「漢帝国」と題しているものの、内容の中心は漢と儒教の関係について。そのため漢の歴史について知っている事といえば、項羽と劉邦や王莽の乱と光武帝による再建、三国志程度の自分には実に手強かった。逆に言えばほとんど初めて教えられる事ばかり。特に儒教が宗教化する過程や王莽の思想的背景、三国志の少し前とかは極めて興味深い。権力と関わる中で教えを変節させるのは、どの思想にも共通する事だなあ。それにしても天人相関説っていったら梵我一如とか近代の神秘主義と共通するように思えて、人間の考える事って似たり寄ったりだと思った。2019/07/21
Tomoichi
42
漢帝国を儒教との関わりとその後の中国にとっての「古典中国」となり得た理由を考察する。通説なんてあてにならず董仲舒の果たした役割ものちのでっち上げで、近年の発掘資料で歴史はひっくり返る。しかし儒教と言われているものも孔子とは全く関係のないものなのかもしれない。2019/07/06
kk
35
国家・社会秩序の大元を支える儒教イデオロギーの発展・展開と、官僚的中央集権主義による諸侯封建制度の克服の過程を、両漢の歴史の中で論考し、この2つの流れが「古典中国」という、いわば国・民族の原型として定着していく様子をダイナミックなプロセスとして提示。この「古典中国」像が中国の伝統史学に及ぼしたインパクトについても論及。読み応えのある力作だけど、「漢帝国ー400年の興亡」というタイトルは如何にもミスマッチ。タイトルだけ見て読んだ人は、きっと戸惑っちゃうだろうな。2019/07/24
フク
31
〈蘇武と李陵の行動は異なるが、漢への思いは共通である。二人の漢への思いから、武帝期には「漢帝国」が意識の上でも確立していたことを窺い得る。〉二人の別れを思い出して泣きそうになった。また読むかな。 * 〈諸葛亮は、後漢「儒教国家」で確立した儒教一尊の価値観の正統な後継者であった。(中略)このため、中国が自身の古典として「漢」を振り返ったとき、たとえば朱子は諸葛亮をきわめて高く評価した。長期的には諸葛亮が「漢」民族の規範となったことを『三国志演義』は今に伝えるのである。〉蜀を持ちあげる理由としてわかりやすい。2019/09/25
パトラッシュ
31
『三国志』は後漢王朝の末期から始まるが、宦官が支配する腐れ果てた国と描かれるためか、400年の歴史を誇る大帝国でありながら軽視しがちだった。しかし、現在に至るまでの中国という「国のかたち」を定めたのは、間違いなく漢朝の時代だったと納得させられる。特に後漢が儒教を事実上の国教として以後、中国は2000年間その影響から自由になれなかった。最初の儒教国家を「聖漢」と崇め「漢字」「漢民族」の呼称も生まれたのだから。思想史的な部分はやや難解だが「漢民族愛国主義」を唱える現在の中国政府のあり方を考える上でも興味深い。2019/06/13
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