内容説明
1831年に書かれた本作。原書が読まれるのはもとより、いまも翻案や改作という形で演じられ続けるのはなぜなのか。その魅力を、仏文学界随一の切れ味を誇る著者が読み解いた番組テキスト(2017年2月号)に、大聖堂が建てられた経緯と技術、歴史的背景について綴った特別章とカラー口絵を加えた、『100分de名著ブックス』特別版。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ころこ
42
『ノートルダムの鐘』も観たことがなく、『ノートル=ダム・ド・パリ』を今回はじめて知った。その上で本書を先に読んで良かったと思ったのは、『パリ』は前提知識が無いと読了不可能だそうなのだ。第1章が総括的な文学論になっている。蒙が啓かれることが多く、『パリ』をこの先読まないひとも、ここだけでも読む価値はある。第2章以降はそうでもなかった。ユゴーの無意識がフランスの古層の様になっているというのはベンヤミン『パサージュ論』と同じ論点だが、神話的小説でありキャラクター小説という観点から理解するとアニメ化も納得だ。2023/12/22
A.T
17
原作者ユゴーの複雑な性格… 父はナポレオン軍の将校、母は王党派という両極の二人の影響下で育ったことが、民衆に軸足を置いた時代精神と、ノートル=ダムの副司教クロードの性欲を抑圧する性格に表れているという鹿島茂先生の読みがポイント。2019年の火災の記録も加筆され、今読む醍醐味も味わえた。2025/07/20
ラウリスタ~
15
改めて鹿島茂の凄さを思い知る。学術的な厳密さ、慎重さが、と難癖つけることは容易いのだが、それを補ってあまりある、一般読書界のためにはなくてはならないストーリーテラーだ。ユゴーの小説(フロベール、プルーストを頂点とする文学研究的価値観では、どうにも評価しづらい)を、神話的であり、まだ現れぬ映画的でもある、「超近代的」小説として示す。ユゴーの生い立ちから、矛盾と嫉妬のテーマに繋げ、ヴァイキングのノルマンディー定着、シトー会による大開墾と布教の時代から、聖母崇拝=ケルトの地母神アナ(森林のような聖堂)への名人芸2023/11/03
レモン
12
原作は未読で、ディズニー映画でのみ内容を知っている物語。カジモドが、美麗な大聖堂から外の世界への憧れを歌う朝のシーンが大好きな作品。アニメで知っていた気になっていたけれど、原作と内容がかなり違うことに驚いた。同時に、フロローがエスメラルダのショールを半ば愛おしげに扱うシーンで感じた疑問が解けた。隊長がなかなかのクズ男だったこともびっくり。ユゴーが、当時まだ存在していなかった映画的視点を小説に盛り込んでいるところなど、とても興味深い。これは原作をぜひ読まなければ。2021/10/26
波 環
8
この前に読んだのが100分で名著の平家物語。これは著者不明で集団的な語りで残された。鹿島によるとそのような物語を神話と定義している。神話なので骨格を変えずにリメイクされて再生されていく。このユゴーも同様。平家物語を元ネタにした作品も、ユゴーも元ネタにした作品も多い。それだけ普遍的な価値を描いているからなのだろう。そのためにはキャラクターを極端化して描き出すことが必要だそうで。牛若丸やら、鐘つき男やら、魅惑的な踊り子やら、静御前やら。『原作』についての作家性の限界線を考えてみる。2025/10/07
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