内容説明
「ガブガブ酒ばっか飲みくさりよって、早く出てゆき!」という嫁の言葉に、行先考えずに家を飛び出した、アルコール依存症の僕。そうして僕は、日本のあらゆる「はじっこ」を旅し始めた。厳冬の能登、薩摩半島、種子島に千葉の先っぽ……。空にむかって「ゴメン」とつぶやきながら酒を飲む。切なくユーモラスなエッセイ集。これは旅なのか? 逃亡なのか? /……桜島を一望出来る鹿児島市内の丘の上にあるホテルにいると、ひさしぶりに家内から電話がかかって来た。受話器の向こうから、「しばらく帰って来ないで」と、か細く、しかし思いつめた声が聞こえた。一瞬どう答えようか戸惑った揚句、「それも、そうだよなあ」と一言、電話を切った。――<本文より抜粋>
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
takaC
68
行き先はあまり重要ではない旅行記。2013/09/11
Ms.H
12
アルコール依存とはやっかいな病だ。吐血しながら、また自分の弱さに向き合えず、逃避するために旅に出る。カモちゃんのそんな弱さが切なくて悲しい。何を求めていたのかカモちゃんにもわからなかったのだろうな…結果からすると、最期に家族にたどり着くための旅だったんだろう。子どもにとって父親がもがいている姿が文章として残っているのは幸せだと思う。2013/08/20
岡本匠
10
何でこんな事になってしまうのだろう。旅をするどいう事は、現実逃避の一種だろうけれど。タイトルが示すように、ひたすら自滅に向けて走り続ける著者が傷ましい。強い酒を飲み続ける事が身体に悪いことは誰しも知っている。しかし、それが止められないという感覚も誰しも知っているのでは。ただし、心身を再生させるプロセスを体得していれば、自滅には至らないのだろうけれど、それが無ければ、ただ、ひたすら自滅への道を歩むしかない。他人事とは思えない苦しい旅行記。2015/12/19
yanoms
5
帰る場所もないし、逃げ場もない。何が寂しくて何が辛いのかを忘れるために酒杯を傾ける。日本のはじっこはどこももれなく寂れてて、でもどこのはじっこでも人々は色褪せた影を引きずりながら暮らしてて。自分の弱さを曝け出すだけの放浪記だけど、不思議と肝臓の底からこみあげてくるものがって、目頭が熱くなった。2013/10/04
えいきち☆。
5
とてもホットする。と思ったら鴨志田さん64年生まれでしたか。ご存命なら是非一献酌み交わしたかったな〜。(西原さんにどやされそうだが…)ユルユルのダメダメ感が何ともいえない。やはり、こんな鴨志田さんの出来上がったルーツはどこに?2011/02/09