内容説明
銀行員ヨーゼフ・Kは、ある朝、とつぜん逮捕される。なぜなのか?判事にも弁護士からもまったく説明されず、わけのわからないまま審理がおこなわれ、窮地に追い込まれていく…。「草稿」に忠実な、最新の“史的批判版”をもとに、カフカをカフカのまま届けるラディカルな新訳。
著者等紹介
カフカ,フランツ[カフカ,フランツ][Kafka,Franz]
1883‐1924。チェコのプラハ生まれ。父母はユダヤ人。法学博士号を取得後、労働者傷害保険協会に勤め、サラリーマン生活を送りながら執筆を続ける。1917年結核と診断され、’24年死去。死後、親友マックス・ブロートの編集によって作品の大部分が出版され、世界的な評価を得る。代表作としては短編『判決』『変身』、未完の小説『訴訟』『城』など
丘沢静也[オカザワシズヤ]
1947年生まれ。首都大学東京教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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夜長月🌙
62
自分が訴えられている。わかっているのはこの事実だけです。裁判にかけられるようですが肝心の何の罪で訴えられているのかはわかりません。人知れる所で罪を何一つ犯さずに暮らしてきた人などいるでしょうか。そうしてみると誰もが訴えられてもおかしくありません。主人公は自らの意思の無い所で他人を訴え罪に陥れたことを知ります。これはまさに誰が訴えられるかわからない恐怖の象徴です。2022/12/10
かみぶくろ
62
『審判』を草稿に忠実に翻訳したもの。官僚組織の訓練された無能力・目的の転移(byマートン)から、社会(・国家)レベルでの目的の空転と不条理をカフカっぽくやや滑稽に描き出す。そこでは誰もが義務を遂行しようとし、何かを狂わせようとして生きてない。でも何も噛み合わないまま不細工に歯車は回ってしまう。カフカの根底にはコミュニケーションへの諦念があるような気がする。作中人物も握手の不発に象徴されるように、お互い全然通じあわない。全体を前にして誰もが孤独であるさまは、なるほど、確かに実存主義である。2015/02/08
財布にジャック
61
プラハに行くのだから、やっぱりカフカを読んで行かないといけないような申し訳ない気持ちになり読んでみたものの、見事玉砕しました。正直私の思考能力では付いていけない内容に、悪戦苦闘しました。不条理なのは解るのですが、あまりのピントが外れた展開に、笑っちゃいました。「変身」の時も感じたんですが、怖さよりもユーモラスさを強く感じちゃう私って変なのでしょうか?理解できない本を、どう感想を述べても説得力がないのですが、何か書かなくてはと今必死で支離滅裂になってます。いつか再読してまともな感想が書きたいものです。2013/06/19
みっぴー
57
未完です。朝起きたら罪人になっていたK。罪の内容は明かされないまま物語が進行していき、判事も弁護士も言ってることやってること全てがはちゃめちゃ。同じ所をグルグル回るだけで裁判は少しも進まないばかりか、一度訴えられたら有罪確定という不条理ワールド全開。Kがチェーンの外れたペダルを必死で漕いでいるだけの話で、読むと神経が疲弊します。不条理もの全編に共通するテーマ、〝おかしいのは自分か世界か〟を存分に堪能できる思考の迷宮。これを読んでから、朝目覚めるのが少し怖くなりました。2016/06/20
藤月はな(灯れ松明の火)
56
印象的だったのが画家の描いた目を塞いだ正義の女神の像と聖職者の「お前は、二歩先が見えないのか?」という言葉。前者は最近、父とリンチの語源と弁護はなぜ、必要なのかということを琉球泡盛を吞みながら語った時に「主観なく、客観から裁判を受ける者の事情を理解し、量刑を定めるするため」と答えた時に父からは「タロットカードの節制の女神が目隠しをしているのは主観に囚われずに罪と罰を考えるためである」と答えたので、後者は神の視点であることが全てを見通すことになるのかという問い掛けがなされている言葉ではないかなと思いました。2014/08/23