内容説明
自称・翻訳家の稲葉が、2年契約で借りた民家は、美しい山里の奥にあった。東京の地上げ屋の魔手が伸びる中で、村人たちの他所者(よそもの)に対する目は厳しい。謎めく稲葉の存在も、彼らには目ざわりのはずだ。やがて稲葉も巻き込み、奇妙な事件が続発する! 恋と冒険の物語を見事な文体で描き、鮮烈な感動を呼ぶ傑作長編。美しい山里が招く冒険と恋!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
背番号10@せばてん。
25
【1990_直木賞_候補】【1991_このミス6位】1993年8月21日読了。92年に“このミス1位”を獲得した「行きずりの街」よりも、94年下期の直木賞選考会で井上ひさしや黒岩重吾らに推された「いまひとたびの」よりも、自分の中では本書が志水氏のベスト。ドライな文章とリズムある文体が、最も好ましく配置された著作と記憶しています。(まだ未読の「背いて故郷」他を読了後、この感想は変わるかもしれませんが…)1993/08/21
Tetchy
6
秩父の山奥の集落を舞台にした田園小説の意匠を纏ったハードボイルド小説か。田園小説とは英国文学が本場なのだが、本書は日本の田舎を舞台にした、故郷小説ともいうべき農耕文化がそこここに挟まれ、日本人の魂の根源を感じさせられる。北方領土、海男の厳しい戦いを描いたシミタツがこんな老成した境地にまで達したのかと思うと感慨深いものがある。悪徳不動産業者との戦いが軸なのだが終始爽やかで、派手ではないが美味しい緑茶を飲んだような爽快感がある。2009/10/13
たーくん
5
トンネルを抜けると緑濃い山を背景に美しい里が現れた。浅茅が原だ。わたしは民家を借り、しばらくここで暮らすことにしたのだった。よそ者への警戒か、多くの視線を肌で感じる。その日、有力者たる氏家礼次郎、そして娘の紀美子と出会ったことで、眼前に新たな道が開いた。歳月を黒々と宿す廃鉱。木々を吹き抜ける滅びの風。わたしは、静かに胸を焦がす恋があることを知った―。 2018/10/27
M
4
父に貰った本(11)。前作が合わなかったのでドキドキしながら読み始めたら、面白くて安心。ギャグ要素もなく、普通のミステリーだった。お互いがお互いを常に見張っている感じが田舎の怖いところだな…。2019/07/19
なつみかん
4
読後感がさわやかで好みだ