内容説明
ある日、元ロス市警副本部長で、現在はセキュリティ会社トライデント・セキュリティの重役になっているクライトンに呼び出され、トライデント社の顧客の大企業のオーナーである富豪、ホイットニー・ヴァンス(八十五歳)が、ボッシュを名指しで依頼したいことがあると言っている、と告げられる。依頼内容は、クライトンも知らず、ボッシュにのみヴァンス本人から伝えるとのこと。ヴァンスに会いにいくと、高齢と疾病のため、老い先短いことを悟った老人から、大学生の頃知り合い、妊娠させながらも、親に仲を裂かれたメキシコ人の恋人を、あるいはもしその子どもがいれば、探してほしいと頼まれる。ヴァンスは未婚で、ほかに子孫はおらず、彼が亡くなれば莫大な財産の行方が気になるところで、もし血縁者がいれば、会社の将来を左右する事態になるかもしれず、そのため、会社側の利益(ひいては自分たちの利益)を優先させる行動に出る重役たちがいることが予想されるため、調査はくれぐれも極秘でおこなってほしい、と念を押される。また、この調査に関する報告は、かならずヴァンス自身にのみおこない、ヴァンス以外の人間から調査への問い合わせは一切しない旨、告げられる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
161
ボッシュシリーズの最新刊にやっととりかかれました。プロローグのようなところで、ベトナム戦争らしき場面が出てきます。前回の事件から、今回は無報酬でのロスの中に存在する小さな市の嘱託刑事と私立探偵の掛け持ちということで設定がうまくなされていると感じました。二つの事件を追うことになります。私立探偵としては大富豪に人探しを頼まれ、刑事としては未解決事件(連続婦女暴行事件)を追うということになります。細かいところまでうまく考えている作家ですね。2019/08/27
Tetchy
155
2つの事件はよくあるミステリのように意外な共通点があるわけではなく平衡状態で進むが、コナリーは決してそれら2つの話に不均衡さを持たせない。どちらも同じ密度と濃度で語り、読者を牽引する。本書はボッシュの私立探偵小説と警察小説を同時に味わえる、非常に贅沢な作りになっている。1950年に別れた女性の足跡をそれまで培ってきた未解決事件捜査のノウハウと刑事の直感で切れそうな糸を慎重に手繰り寄せるように一つ一つ辿っていくボッシュの捜査はなかなかにスリリングで、しかも人生の綾をじっくりと味わわせる旨味に満ちている。2020/04/06
ケイ
124
ボッシュシリーズ既訳での最新刊。レイプ犯と億万長者の後継ぎ探し。ボッシュの身分は相変わらず微妙で、さらにそれを不安定にさせる身近な敵が今回も。ボッシュが心配で、気付くと上巻が終わっていた。しかし、今回はベトナム戦争やエコーパークの描写が出てきたことでボッシュ作品最初の頃との違いも痛感した。あの暗さがないのだ。真っ暗闇の中に時折光る微かな光の中で、這いつくばりながら真実を探そうとするボッシュの姿はもうない。母の闇を追い求めるボッシュと、娘を心配するボッシュは、やはり違う。作品自体への感想は下巻で。2019/11/15
のぶ
104
まだ上巻を読む限りだが、本作のハリー・ボッシュは、私立探偵でありながら無給の嘱託刑事という何か半端な立場。冒頭にセキュリティ会社の顧客の大企業のオーナーである85歳の富豪、ホイットニー・ヴァンスから大学生の頃知り合い、妊娠させながらも、親に仲を裂かれたメキシコ人の恋人に子供がいれば、探してほしいと依頼を受ける。単純な話かと思い読み始めたが、物語は意外な広がりを見せる。加えて登場人物が結構多く予想以上に複雑だ。この先どうなっていくのかまだ見えない。でも面白い内容で下巻が楽しみだ。2019/07/28
stobe1904
58
【非常勤刑事と私立探偵をこなすボッシュ】ロス市警を去ってサンフェルナンド市警の非常勤刑事として働く一方で、私立探偵として活動を始めたボッシュは、大富豪から過去に生まれていたかもしれない子供の捜索を依頼される。刑事として追う連続暴行事件と子供探しがどのように収束するのか、老境に差し掛かっても気概を持ち仕事に注力するボッシュの活躍に期待が高まる。さすがに長いシリーズだけあって、出来栄えにバラツキはあるが、この作品は面白そうな予感、下巻に期待。2020/09/19
-
- 電子書籍
- 僕らはみんな死んでいる♪ タテマンガ版…
-
- 電子書籍
- 宿敵の口づけ【分冊】 11巻 ハーレク…
-
- 電子書籍
- わたしの家族飼育日記【タテヨミ】第12…
-
- 電子書籍
- 禁断の情熱【分冊】 3巻 ハーレクイン…
-
- 電子書籍
- 季刊オピニオン・プラス 19年冬号