内容説明
第19回司馬遼太郎賞受賞作、待望の文庫化。
全島蜂起!
幕末の隠岐「島後」に吹き荒れた叛乱の嵐――本物の歴史小説の凄みと醍醐味を、ぜひとも味わっていただきたい。
第19回司馬遼太郎賞受賞作、待望の文庫化!
弘化三年(一八四六)日本海に浮かぶ隠岐「島後」に、はるばる大坂から流された一人の少年がいた。
西村常太郎、十五歳。大塩平八郎の挙兵に連座した父・履三郎の罪により、数え六つの年から九年に及ぶ親類預けの果ての「処罰」だった。
ところが案に相違して、大塩の乱に連座した父の名を、島の人々が敬意を込めて呼ぶのを常太郎は聞いた。
翌年、十六歳になった常太郎は、狗賓が宿るという「御山」の千年杉へ初穂を捧げる役を、島の人々から命じられる。下界から見える大満寺山の先に「御山」はあったが、そこは狗賓に許された者しか踏み入ることができない聖域だった。
やがて常太郎は医術を学び、島に医師として深く根を下ろすが、災禍に痛めつけられ、怒りに染まっていく島民らの姿を目の当たりにする。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
レアル
49
大塩平八郎と共に一揆を起こした事により、その罪で息子である常太郎が隠岐に流されるところから物語は始まる。大塩平八郎の乱が詳細に書かれているのも読み処だが、隠岐の物語!というのがとても良い。最初は本の分厚さに圧倒されたが読みだすと止まらない。素晴らしい物語だった。2022/04/10
Book & Travel
43
骨太の歴史小説を読みたくて、外れ無しの飯嶋作品を。大塩平八郎の弟子だった父・西村履三郎が乱に連座したことで、15歳で隠岐に流刑となった常太郎。島の人々の温かさと、百姓の為に斃れた父の名にも助けられ、医の道へ進んでいく。隠岐の自然と人々の暮らしの営み、登場人物の魅力に前半から引き込まれ、大塩の乱から幕末へ向かう時代の空気感、天然痘やコレラとの戦い、迴船の発達と島各港の繁栄などが物語と共に綿密に描かれ、とても読み応えがあった。また著者らしい徹底的な庶民目線で描かれるのが、島からの搾取しか頭にない松江藩の→2022/12/22
まめこ
16
★★★★☆大塩平八郎の乱に与した西村履三郎の息子、常太郎が流刑地の隠岐で過ごす地に足着いた前半に比べ、後半、松江藩の横暴、村民同士の対立など、憎しみが溢れすぎて読むのが辛い。問題を直視せず力で押さえ込み、既得権益にしがみつく支配者。土民と米を国民と税に言い換えれば「国民は黙って税だけ納めておれ!」…全然違和感ないのが怖いし。これは私が支配される側の人間だからの感想なのかなぁ。2019/11/12
こだまの本棚
14
【半分地点】(忘れる前にこの地点で一段落)確かに面白いには面白いのだが、700p越えという点を踏まえてしまうとあと一つの点があることも否めない。個人的にはストーリーに目的があってもう少しキャラが立てばさらに楽しめたかな、と思う箇所がいくつか。しかしながら知識が増える作品ではあった、時代背景も事細かく書いてあったりする点でも作品の雰囲気に入りやすい点の一つ。急な時代を飛ぶ書き方や登場人物の多さに戸惑わなければ十分に楽しめる作品だとは思う。(読み終わったときに感想をコメントにて)2020/04/14
Y.yamabuki
10
西村常太郎は、父が大塩平八郎の乱に連座した罪により、隠岐に流される。乱の時は6歳、15歳になるのを待っての遠島。運命を淡々と受け入れ、島の人達の温かい助けを受け島に馴染んでいく。そして医者になり島の人々のため懸命に働く。こういった気持ちの良い話と同時に、大塩平八郎の乱の原因や孤島であった島にも変化が訪れ、幕末の混乱に巻き込まれていった様子が丹念に描かれている。幕府崩壊の過程も違った角度から理解出来面白かった。ラストは、この後常太郎は、幸せに暮らせたのだろうか?島の人々はどうなったのだろうか?と気になった。2019/12/17