角川文庫<br> 越年 岡本かの子恋愛小説集

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角川文庫
越年 岡本かの子恋愛小説集

  • 著者名:岡本かの子【著者】
  • 価格 ¥528(本体¥480)
  • KADOKAWA(2019/08発売)
  • ポイント 4pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784041085615

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内容説明

12月のある日、加奈江は同僚の男から突然平手打ちをされる。しかも男はそのまま退職してしまった。加奈江は悔しさのあまりその男を探して銀座を歩き回るが…(「越年」)。恋愛にまつわる傑作短編を収録!

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

じいじ

91
表題作【越年】は昨年、谷崎・太宰・芥川・有吉佐和子ら懐かしい作家のアンソロジー、女体をめぐる『晩菊』に収載されていた。本作は、その『越年』を含む八つの短篇集。馴染みのない岡本かの子の小説だが、女と男の心の綾が、面白く描かれています。短歌をやられているので、情景描写が繊細で綺麗です。再読の【越年】だけに主人公二人の胸中が、より鮮明に読み取れた。終末に、女のもとに男からの詫び状(恋文)が届く。二人の本当の恋が始まる気がする。時には、こういうプラトニックな恋愛小説もいいものだ。2020/05/10

ちぇけら

23
羊水の中を思いの儘に揺蕩っていると、鳥が飛び立つように眼が覚めた。僕はぼんやりした頭で女の名を呟く。喉の渇きがその声を掠らせ、不明瞭な響きだけが喉の奥に残った。「あたし何だか、ぽちぽち冷たい小粒のものが顔に当たるので雨かしらと思いましたらね、花が零れるのですわ」今では女の顔も容も覚えていない。覚えているのは、女から漂う夏の匂い。かつて僕は女を強く憎んでいた。だがいつしか愛の透徹を誓っていた。女の記憶が薄れていくぶん、女への気持ちが濃くなっていく。思いを伝えられぬまま、積もって、募って、胸がきちきちと鳴る。2019/10/07

20
五感に訴えてくる芳醇な文体。言葉が色づいて拡がっていく。行間からたなびく情念に酔いそうになる『金魚繚乱』。顎の裏のとれない花びら。男性の心裡、言い訳としての矜持、どこかでぽきりと折れてしまうのを待ちわびているようなもどかしさが見事に描かれる。女たちが現実への柔軟さを隠さないぶん、男たちは愚かでありながらもいじらしい生き物でいられる。『夏の夜の夢』なんと眩い儚さ。永遠がその胸に透き通って積もっていくよう。『過去生』美しき兄弟の閉じた空間に絡めとられそうになる。物語から抜け出すのが惜しい一冊だった。2025/10/04

しんすけ

20
先月から、かの子がデユラスに重なってならない。 かの子が書いた「老妓抄」では、若い男の成長を見守る女の姿が描かれている。 かの子自身がそんな生活をしていたわけではない。周りにいたそんな女を観察した結果が「老妓抄」だった。奔放で夫の一平以外にも、恋人がたくさんいたかの子だが、本当は優しい女だったのだろう。一平の回顧にも、かの子への慈しみはあっても憎む言葉はない。 所収作品中の最高作は「金魚繚乱」だろう。美しい金魚を作る男の姿は、愛しい女への想念に重なり耽美的でさえある。 初読時は理解できなかったが。 2022/09/08

あ げ こ

17
その言葉の強健さよ。決して衰えてしまう事のない、その迫力と凄み。漲っている。存分に潤い、行き渡っている。何もかもが匂い立つように艶めかしく、濃い。ずっしりと、重い濃さ。ねっとりと絡みつくような、執拗な濃さ。摂取し切れぬほどに、濃い。おさまり切らず、溢れ出てしまうほどに、濃い。すべてを強烈に感じる。生と死の美と醜、臭い、ぬめり、煌めき、凄まじさやしつこさやたくましさ。欲望も虚しさも、憤りも喜びも。迸る様も、超然と咲き誇る様も、悶々と溜まり、滞る様も、貪欲に吸収し、蓄える様も。むくむくと育ち、豊艶に香る様も。2019/09/04

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