内容説明
平成の三〇年は「壮大な失敗」、今後も続く「失われる半世紀」への序曲であった・・・。「失敗」と「ショック」の意味を多分野にわたりシビアに総括することからしか、新たな展望は描けない。経済、政治、社会、文化でこの三〇年間、何がおきたのか。社会学者吉見俊哉が「ポスト戦後社会」の先に待っていた空虚な現実を総括する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
126
著者の本はたぶん初めてなのですが、この本の位置づけは同じ岩波新書の「ポスト戦後社会」の続編ということで、日本の平成時代が如何に失敗の連続であったかということを書かれています。企業(銀行と家電)、政治、社会、エンターテイメントなどの分野からかなり詳しく分析されています。このようなあとには希望があるということも匂わせてくれます。力作であると思います。2019/06/24
k5
77
シリーズ平成。しかし類書にはない圧倒的な面白さでした。平成という時代の「失敗の博物館」を構築する、というコンセプトのもとに、経済、政治、社会、文化を検証しますが、忖度がないからなのか、電機業界を中心とする企業の「失敗の本質」を語った第一章がなかでも秀逸。失敗を語っているにもかかわらず、この本が刺激的なのは、あとがきにあるように、社会の構造的な必然性による失敗の物語こそが、未来への希望をつなぐ唯一の方法という思いがあるからでしょう。個人の失敗を責めるのでなく、一歩引いて社会を見ようとする姿勢が信頼できます。2020/07/13
rico
72
国民一人当りのGDP、論文数、出生率、時価総額のランキング・・・。様々な指標が、平成時代にこの国が坂道を下り劣化し続けていることを示す。つまり「失敗した」ということ。2つの震災という自然の脅威が追い打ちをかける。本書では、その失敗について「政治」「経済」「社会」「文化」という4つの軸で検証し論じる。共感するところは多いが、違うだろうと思うところもある。ただ「失敗」をなかったことにしたり、特定の「何か」のせいにしで思考停止していては何も変わらない。「失敗」に向い合う強さを私たちは持てるのか。正念場だと思う。2019/07/31
佐島楓
61
経済・政治・震災・文化などのトピックからまとめられた平成史。この手の新書にしては読みやすく、アニメなどのサブカルチャー分析も含まれている。政治と経済は個人的な認識の補填に役立った。失敗を真正面から再検討しないと、修正や成功はできない。この国の国民性や組織はそれを避けているように思う。2019/06/05
白玉あずき
41
未来へと活かすために失敗から教訓を得るという立場から書かれているが、政治にしても経済にしても、神ならぬ身の後からわかることばかり。その場しのぎに過ごしてきたつけが、ただ今現在の暗い世相を作ったわけだ。一番つらいのが、社会の土台である家庭や中間団体、地域を流動化崩壊させてしまったこと。世界で一番「孤独な日本人」とまで言われるようになったら、次世代も作れず社会を維持する事も出来ないわけだ。大変読みやすいのだが、暗澹たる気分になります。昔のように一族郎党が狭い家にぎゅっと住んで、助け合って生きていくのが吉か。2019/12/08