内容説明
条約改正や日清戦争の難局を打開した外交指導者、陸奥宗光。幕末の紀州に生まれた彼は、坂本龍馬のもと海援隊で頭角を現す。明治新政府において県知事などを務めるが、政府転覆計画に関与し投獄される。出獄後、欧州遊学を経て再起し、駐米公使としてメキシコと対等条約を締結。1892年、伊藤博文内閣の外務大臣に就任し、条約改正や日清戦争で手腕を発揮した。最新の研究成果をもとに、「日本外交の祖」の実像に迫る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
skunk_c
30
藩閥から離れている分、例え海援隊にいたとしても維新史には殆ど名前が出ない人で、外交官として日英通商航海条約、日清戦争に登場、しかしその仕事ぶりへの評価が高い人だった。今回このコンパクトながらかなり詳細な評伝により、その心理的側面や、政治家としての指向性や資質を知ることができた。かなりの策士であり、議席を持つ閣僚でありながら、既成の政党とは距離を置くスタンスは、その「政治好き」な生き方とともに、この希有な人物を際立たせているようだ。著者は若い研究者だが、読みやすくまとまりのいい著作で、今後が楽しみだ。2018/11/20
鐵太郎
26
孤高にして狷介と評され、剃刀陸奥と畏怖された日本外交の父の一代記。単に理想の政治・外交術を求めて生きたのではなく、明治の藩閥政治の中で立身出世を志し、あるべき理想の日本を築くためにあらゆる手練手管を用いて奮闘した一人の熱情家・努力家の物語。即断即決の切れ者という世評の中で、「決してそんな当たって砕ける主義の野猪漢ではない。彼は如何なる場合にでも、出来得る限りの考慮を回らして、為し得る限りの準備を怠らなかった(P197)」と評された人物の生き方は面白い。あと10年の寿命があったら、時代に何を残しただろう。2022/01/29
Tomoichi
20
明治の大外交官、陸奥宗光の評伝。幼少期や坂本龍馬との関係なども面白いが、この時代人特有の変人ぶりである。それでも伊藤博文や山県有朋ともうまくやっていたのだから中々仕事はできたからだろう。変人偉人から学ぶって無理があるのかな?2021/02/14
Kentaro
20
陸奥宗光と言えば、条約改正や日清戦争において日本外交を導いた外務大臣として知られる。おそらく日本史上、最も有名な外務大臣だ。何を成したかという点から見ると、外相時代、とりわけ条約改正と日清戦争が、陸奥生涯最大の山場だ。しかし、陸奥の人生全体を振り返ってみれば、終生関心を向けていたのは日本の政治体制の変革であった。後の陸奥外相期の条約改正事業において根幹となる考えは、法権の完全回復を軸として「対等条約」の締結を図ること、そしてその際の根拠を日本の変化や進歩に求めること。「対等」というのが最大のキーワードだ。2018/12/05
LUNE MER
18
面白かった。自分の中の陸奥宗光は海援隊にて坂本龍馬に師事し、龍馬の報復のために天満屋騒動の際には血気盛んに斬り込んだ若かりし頃のイメージが強く、むしろ一般的なカミソリ外相としてのイメージには明るくなかった。本書を読めば、上記のイメージ群がどうも実像とは異なるらしいという点も含め、陸奥宗光という明治の男の生き様を堪能できる。半沢直樹のスタッフでドラマ化したら非常にしっくりきそうな人生。ハイライトは条約改正と日清戦争だが、教科書の記述の行間に彼の熱さや絶妙手あり!と読んでいて爽快だった。2021/09/15
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