内容説明
揃いの国民服に身を包む金髪碧眼の「日本人」に、武力による平和実現の大義を説く黒髪の首相A。母の墓参に帰郷したはずが、「日本国」の違法侵入者として拘束された小説家Tは、主権を奪われた「旧日本人」の居留地に送られる。そこで自分と瓜二つの伝説の救国者Jの再来とみなされたTは、国家転覆を狙うレジスタンス闘争に巻き込まれていく。もう一つの日本に近未来の悪夢を映す問題作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ASnowyHeron
29
パラレルワールドの世界観がおもしろかったが、自分には合わなかった。2018/03/10
sayan
27
清々しいまでに傀儡国家を描いた作品だ。「日本人」と「旧日本人」を対立構造に展開するパラレルワールドだ。タイトル宰相「A」から、現実に引き付けた読み方が可能だ。その場合、単行本より文庫本表紙が印象に残る。一方本書は、三島由紀夫、カフカ「城」、ゴッドファーザーなどがキーとなり、読み手に解釈や楽しみの幅をゆだねる。個人的には描かれる政治思想や体制が「解放された世界(H.Gウェルズ)」と対極で興味深かった。著者の想いは主人公の末路に反映されるのでは、と思う。最終的に描いた世界で求められる人物像が投影されるからだ。2019/01/21
またの名
15
困ったことに駄作と言わないまでも魅力を失ったのは、本書が描いた管理統制国家もショボく感じるほど刊行後に公文書と統計の改竄やポスト真理などの強権が広まってるから。作家業を続けたがるヘタレ主人公が母の言葉を支えに面白い「言葉の並べ替え」によって外界と関係しようとするのに対し、転生先の異世界の宰相Aは「戦争主義的平和主義」というこれ以上なく最高の言葉の魔術(詐術)を駆使して、本当は自分が別の者に統治されているだけの統治を進める。苦しい拷問など課さずとも権力者が友達の輪を拡張する点でも、小説の想像力を現実が凌駕。2019/07/27
SAT(M)
12
「戦争的平和」を掲げ武力行使を善しとするパラレルワールドの「日本」を描いた作品。筆者自身の分身の小説家Tの視点から描かれているのですが、傍観者気質というか、ネットの住人気質というか…。粘っこく分析をして相手のアラを探すあの感じ…。体制側も反体制側も悪意のある描き方をしています。その一方、小説家T自身に関しては、一つ覚えに紙と鉛筆を求めるような、”ピュアな創作意欲だけを持った無力な無垢な存在”として描いているのがなぁ…。もっと汚れた主人公じゃないと、入り込めないよ、というのが正直な感想です。2018/05/12
なぎさん
7
パラレルワールドの日本を描いたディストピア小説。題材としては面白いんだけど、色んな話の展開がイマイチ物足りなかった。今年は表現の不自由展の問題などもあり、もうこの作品の世界に現実が追いつきそうで怖い怖い…。2019/12/20
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