内容説明
夏目漱石の弟子であり、ほぼ同世代のカフカに通ずると評される夢幻的作品『冥途』で作家としての活動を始めた百閒は、昭和八年の『百鬼園隨筆』がベストセラーとなって注目される。本書は、百閒47歳から55歳までの「極めて特異な作家」の戦前・戦中の日常の貴重な記録である。
凡例:昭和11年1月~15年6月
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
bapaksejahtera
9
内田百閒日記上巻は昭和11年から15年半ばにかけての分。日々の行動記録であり荷風断腸亭日乗のような日記文学の味わいは少ない。社会的動向への所感も乏しくニ・ニ六についても軍人謀反の噂と記すのみ。但し長男死亡への哀悼、受洗した長女を勘当すると言った後、その就職を心配する話、旧制高校への受験失敗を繰り返し屡々(本妻宅から)家出をする次男への心配など人柄がわかる。記述の中心は借金暮らしのやりくりで月々の収入が記載される。小日向と麹町2つの借家を有し生活は苦しく盛んに売文に励むうち漸く郵船顧問の職を得て一息つく。2021/08/23
AMU
8
百聞先生の日々の淡々とした記録。日々錬金(借金)に忙しいのに琴や小鳥を嗜むその余裕は流石です。 ただ先生、血圧180とか高すぎ!息子さん何年も入試失敗しすぎ!とつっこむ。2019/09/10