内容説明
単行本『赤い歳月』から2篇、『菓子祭』から13篇、さらに、文庫初収録の名篇『夢の車輪』から全12篇、計27篇の秀作集。現実と夢の壁を、あたかもなきがごとく自在に行きかい、男と女との「関係」などを、鋭く透写する硬質な作家の「眼」が、内から硬質の光を鋭く放つ! 『砂の上の植物群』、『暗室』、『鞄の中身』の達成の上に立つ、短篇の名手・吉行淳之介の、冴えわたる短篇群の「かがやき」。
目次
●夢三つ
●寝たままの男
●途中の家
他
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐島楓
17
27編の掌編からなる作品集。悪夢を描写したような作品が多く、この作家の闇の深さを改めてみるようであった。性的なモチーフも多い。感覚を描写する筆はやはり図抜けていると思う。2014/02/22
メイ&まー
13
読んでいるうちに、夢と現実、登場人物と自分の境目がぼやけて曖昧になり足もとがぐらつくような感覚を覚える掌編27篇。菓子祭、という響きに惹かれて手に取ったのだけど、その甘い香りはいつの間にか、滲み出る漿液とか、男と女とか、官能とか、匂いたちグロテスクな印象に取って代わり、乗り物酔いみたいなぐらぐらふわふわした心地で読み終えた。2014/02/07
ken
4
吉行淳之介もまた繊細な神経の持ち主で、夢と現実の狭間を生きた作家なのだろう。特に『夢の車輪』は芥川の『歯車』を彷彿とさせる。作中の主人公の眼前に出現する車輪は、芥川の歯車同様に彼の神経衰弱がもたらす幻覚だったのかもしれない。本書で扱われている掌編はどれも彼の夢を題材にしたもので、グロテスクな雰囲気を纏っている。おそらくはナルコレプシーの症状と思われる悪夢や幻覚を素材にして、それらを独特の文学へと昇華している。解説にある通りそれらは散文というよりも詩に近いため理屈による解釈は不毛だろう。2016/08/09
ササヤン
0
夢の話ばっかりだな。現実の話でもちょっと、難しすぎてわからない話があった。 「あいびき」はブラックユーモアすぎて、ある意味、笑えなかった(苦笑) 文章も難しかった。12年以上前に高校時代に『子供の領分』を読んだ時は、そう感じなかったが、大衆小説を読みすぎているせいだろうか……2017/11/20
のん
0
四半世紀ぶりの再読。結構覚えてたのは、皮膚感覚に訴える短編だからかもしれない。2014/09/08