内容説明
空襲の激しくなった昭和19年、14歳の時に日本画家の父が急逝し、終戦後の混乱の時代に青少年期を過ごした山川方夫。芥川賞と直木賞のふたつの賞の候補になりながら、受賞にいたらぬまま34歳で交通事故のため急逝した山川方夫。没後50年にして、山川方夫のショートショートと純文学作品は新生する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
獺祭魚の食客@鯨鯢
12
ヒッチコック・マガジンにも掲載されたという名作「夏の葬列」はミステリー作品であるだけでなく、戦争文学など多面的な側面を持っているおり、昔あった一粒で二度おいしいキャラメルみたいです。「あるドライブ」「三つの声」は森村誠二のような男女の恋のもつれの悲劇的結末を描いています。 どちらも乾いた文体での残酷な展開が読む者の気持ちを宙ぶらりん=「サスペンデッド」にしてしまう、まさしくヒッチコック映画「サイコ」のようです。早世しなければ、大作家になっていたことは間違いありませんね。2018/03/02
moonanddai
6
「独りきりにならない努力を独りきりでし続ける」と解説にありましたが、そうなのでしょう。あれだけ「自己の殻」というものにこだわりながら、「他人」との接触に敏感であり続けるともいうのでしょうか、うまく言えませんが、分かるような気もします。でもそれが好きかというと、自分のことを見ているようで、肌には合わない気がします。2018/04/11
hiratax
3
表題作は江ノ島が舞台だ。この島を「鮭の切り身」のような島と形容している。ぐっと覚めていて、ユーモラスな視点がある。彼は二宮に住み、小学校から大学院までを慶應に通った「三田のお坊ちゃん」作家という印象がある。だが、年譜とあわせて読むと、二宮は疎開先であり、通学も過酷であったと。艦載機による銃撃も実体験としてあるようだ。それは「夏の葬列」の一場面に結実する。私小説ではないのだけれど、やはり体験に基づいたエピソードも多いのだと気づく。全集には放送作家としてのシナリオもあるよう。読んでみたい。2016/01/14
あだっち55
2
昭和19年、14歳の時に日本画家の父が急逝し、終戦前後の混乱の時代に青少年期を過ごした山川方夫の自伝的な作品。友人や恋人と関わる時の互いの感情の持ち方が微妙で、新鮮だった。学生の頃から同人誌の編集や「三田文学」の復刊にも携わり、新人発掘を得意としたという。芥川賞や直木賞の候補に何度も挙がり、結婚もしたばかりだったというのに、34歳の死はあまりにも惜しい。 2016/02/29
Hisashi Tokunaga
1
作者山川は昭和40年4月9日蒲田妙覚寺の山川家の墓に埋葬された。で、本作品集だが、彼の試作的作品群からなっている様だ。彼自身事故死の前頃から、長編への挑戦が芽生え始めたのではないか?なんとなく前期三島由紀夫を彷彿させる作風を感じるのは私だけだろうか?60年代の日本文壇を風靡し得る彼の履歴にも注目されて良い。2016/05/02
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